「・・行こうか?」
清水に促され、しのぶはコクリと頷き、清水の後に続く。
(・・疲れた・・。何も考えられない・・。)
放心状態のまま数分ほど歩いた頃、しのぶは駅から反対方向、清水が繁華街に向かっていることに気付く。
先刻のカラオケボックスのある通りとは違うが、繁華街を抜け、やや寂れた街並み。
(え?ひょっとして・・?)
このまま進めばホテル街に突き当たる。
最後の仕上げ、とばかりに清水はホテルでしのぶを抱こうとしているのだろうか。
(・・それなら、それで・・。)
心身ともに疲労困憊したしのぶは、やや捨て鉢になっていたが、それ以上に全身に纏わりつく快楽への乾きを振り払いたかった。
かつて経験したことのない性的な乾きと疼き。
それが自慰、もしくは清水に抱かれることで解決される確信は無かった。
なにしろ、あれだけの辱めを受け、その結果、ここまで昂ぶってしまったのだ。
調味料やスパイス無しに口にする食事は、味気なく感じてしまう可能性がある。
(・・自分でするのなら・・一人になってからでも・・。)
だか清水と別れてしまったら、現時点でふたつある選択肢はひとつになってしまう。
肉体関係を結ぶことにより、清水との不倫関係が始まってしまうのは本位ではないが、今のしのぶにとっては躯の疼きを鎮めることが先決であった。
(・・ああ、やっばり・・。)
背の低いビルの陰から妖しげな看板が見え隠れし始め、しのぶが覚悟を決めた瞬間、またもや清水は予想外の行動を取った。
古びた雑居ビルに向かう清水は、細く狭い階段を昇り始める。
(・・どこに向かっている・・の?)
階段を昇りきると狭い踊り場があり、そこには遮光フィルムを貼ったガラス張りのドア。
そして未成年の出入りを禁じるお決まりの文言が表示されていた。
先行する清水は無言でチラリと振り返ってから、ドアを開けて店内に進む。
一瞬、躊躇った後、しのぶは清水に続き店内に足を踏み入れた。
(・・ここ・・は?)
怪しげな立地条件、建物の外観にも関わらず、店内の様子は明るめな間接照明に照らされ、整理整頓が行き届いていたが、何がしかの妖しげな雰囲気に満たされている。
しのぶが店内を見渡し、壁際にズラリと並ぶ棚に陳列された商品を眼にした瞬間、感じていた違和感に気付いた。
(これって・・ここって・・。)
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