北野にあるコーヒー店に着いた私は、キャラメルマキアートのトールを頼んで2人がけのテーブルに着いた。まだ、直哉さんは来ていない様子であった。ストローに口をつけてキャラメルマキアートを口の中に含むと、氷で冷やされた冷たい液体が渇いた喉に染み渡るり、胃の中へと流れていった。先程まで熱くなっていた私の体内がこのおかげで少しずつ落ち着きを見せていった。
時計の針が約束の時間を指した時、店の扉が開いて1人の男性が入ってきた。身なりはキチンと整えられ、精悍な顔つきに男らしいヒゲが生えていた。スーツの上からでもわかるほど、ガッチリとした身体は男のフェロモンを醸し出しているようだった。私は一目見てその男性に良い印象を感じた。
「まさか、そんな素敵な人が直哉さんということはないよねぇ…」
私は小さな声で独り言を発した。
その男性は店員さんに何やら飲み物を注文していた。用意が出来るまでの間、彼はポケットからスマホを取り出して何やら指を動かして文字を打つような仕草をした。
「ブーッ…ブーッ…ブーッ…」
彼の指の動きが止まったのと同時にテーブルの上に置かれていた私のスマホが震えだした。
「えっ?まさかね…」
私は期待と不安の入り混じった感情を抱きながらスマホの画面を確認した。
「ちひろさん、今店内に入りコーヒーを注文しました。そちらから私の姿は確認出来ますでしょうか?それともまだお着きではないでしょうか?もし店内におられましたら、ゆっくりと席を立っていただけないでしょうか?直哉」
私の胸はドキドキが治らなくなった。
「嘘っ…そんな…ぁあん…すごく素敵っ…」
私は慌てて椅子から立ち上がってしまい、テーブルの上に置いていたキャラメルマキアートが入ったコップを盛大に倒してしまった。
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