その10
私と麻衣子はすぐに仲良くなった。
きっと私達は真逆の性格だったからだろう。
私は明るく、社交的で積極的な女の子だった。だが、本当は自分に自信がなく、周りに流されやすい。
麻衣子は大人しくいつも控えめだが、決して流されない、しっかりとした芯を持っていた。
「ねえ、麻衣子。今度の週末ディズニーランド行かない?」
「行きたい!あたし行った事ないの!」
私は心底驚いた。私も行ったことがなかったから。
「うそ!麻衣子はじめてなの!真美もだよ!!」
私は麻衣子と別れ、帰りの電車に揺られている間中、
ドキドキが止まらなかった。友達とディズニーに行くという夢が叶う事もそうだが
麻衣子の初めてのディズニーの相手が自分である事が嬉しかった。
二人で何に乗りたいか相談している時もまるでデートする恋人たちのように
二人ともが興奮し、少し顔を紅潮させていた。
麻衣子はどんな高校生だったのだろう。横浜に住んでいてディズニーに行った事がないなんて少し意外な気がした。
私は最寄駅で降りるとスキップするように帰路を歩いた。
そうだ。ディズニーに行く前に麻衣子と一緒に洋服を買いに行こう。
お揃いの服を着て、腕を組んでパレードを見よう。
さっそく麻衣子にメールをしようと携帯をバックから取り出した時だった。
携帯が悪魔からの着信を告げていた。
「はい。もしもし。。」
「私だ。今週末そちらに行く。夕方頃に着くはずだ。風呂を沸かしておいてくれ。」
「はい。。」
私にはロボットになれるスイッチが備わっている。
私はそっと自分の心の中のスイッチをOFFにして
麻衣子にメールをした。
「麻衣子ゴメン。週末は父が上京する日だった。ディズニーはまた今度。
ホントにごめんね。必ず今度行こうね。あたしと行くまで誰とも行かないでね。」
メールを送信するとロボットのはずの私の目から涙が溢れた。
麻衣子からの返信はすぐにきた。
「わくわくできる時間が伸びたね。ねえ真美。今度ディズニーに着ていく服一緒に
買いにいこ。真美とお揃いで行きたいんだ。あれ?あたしキモイ?」
私は麻衣子からきたメールを何度も読み返し、その場に立ち尽くし泣いた。
※元投稿はこちら >>