40.花電車って、何?
私は、誓約書を見なかったことにして、別の書類に目を通しました。
さて、誓約書と一緒に入っていた行動日程を見ると、今日は、このまま秋葉原へと書いてあります。
普通、外国からの大事なお客様は、昼はゴルフに温泉、そして夜は、宴会でしょうか。
ゴルフでは無くて、何故にアキバ?と思いましたが、訳は直ぐに判りました。
空港の国際線到着ロビーでお迎えしたお客様は、VIPというより、見るからにオタクでした。
先に空港で待ち合わせ、そのまま同行してきた某所職員氏と一緒に、一路、秋葉原へ。
某ホテルの駐車場に車を入れ、交通博物館の跡地を見て涙するお客様ならぬ、オタク様を引き摺るように聖地見物。
ユウジは距離をとって後ろから付いて来ているようです。
街中、あちこち見て廻って、一番興味を持ったのはアダルトショップのビルでした。
私は入るのは2度目でしたが、初めて入る素振りで恥ずかしそうにしながら、職員氏と外で待機。
正直、この方が重要なお客様とは思えなかったのですが、何でもかの国の大事な方のご子息とのお話で、職員氏も、私が言葉が判るのを知ると、母国語で色々と質問攻めにしてきました。
私が知りうる範囲が少ないことが判ると、そのまま無口に。微妙な空気が流れます。
結局、こっそりとお忍びでオタク様だけが店内を楽しんで、コスプレ衣装を購入。
他にも大量のグッズを買い込み、職員氏とユウジの両手は紙袋で一杯です。
この荷物を車に収めた後、オタク様待望のカフェへ。
カフェで昼食にした後は、早速、高速鉄道で有名温泉郷へ移動です。
オタク様には、とても近い距離に思えるのでしょうが、日本では遠距離移動であることを承知して頂きました
地震の無い国から来られたので、職員氏は、大層心配していましたが、日本の景色にオタク様は上機嫌です。
目的地の駅には、手配済みの車が用意してあり、ユウジの運転でコーディネーターの待つ有名ホテルへ。
ここの案内をパッドを使ってNET検索すると、混浴温泉と紹介されています。
昨夜からの出血に困ったなぁと思っていましたが、とりあえずオタク様ご一行はユウジに任せて、挿入タイプの生理用品を入手し、ついでに夜の接待先を探すことにしました。
宿で待っていた、顔にミシン目のある強面ですが、妙に優しい口調の現地のコーディネーター氏に相談すると、この温泉地では、近年は土地、特に水源の買占めがあり、かの国の人々への感情が宜しくないとのお話です。
お姐さんたちからも、爪が伸びているから嫌がられるとか、自分勝手な行為が目に余るとか、評判は散々なようです。
それでも、何とか一軒のスナックを手配して宿に戻ると、他人と混浴する習慣の無い国から来た職員氏は、非常に不機嫌です。
逆に、温泉を楽しみにしていたらしいオタク様は、ユウジとすっかり意気投合していました。
精神的な子供同士は話が合うのでしょうか。
特別室での夕食時、職員氏は余り酔っていない風なのに、周囲が言葉が判らないと思ってか、下ネタ連発です。
困って、コーディネーター氏に、面白い遊びを聞くと、花電車などどうかな?と。
私には何の事やら皆目?見当もつきません。
早速、NETで調べて、目が点になりました。
割り箸折りとかバナナ切りとか、絶対無理!でしょ?旦那様。
最早、職員氏は酔わすしかないと思った私は、コーディネーター氏に耳打ちして、
夕食後の段取りを早めることにしました。
ユウジの運転する車で20分ほどのところに、その店はありました。
貸切にしたのは、ママと4人のホステスの小さな店。
最初は普通にカラオケなどでしたが、サイコロでの、かの地特有の遊び方も知っていて、
ある切っ掛けで、スナックのママは、かの国の出身者だと判りました。
すると、その場の女性全員が、かの国の言葉が話せるとの告白。
ホステスさんたちも、沖合いの島の出身で、かの国とは一緒にして欲しくないので黙っていたそうです。
実は、ここまで聞いた話で判ったのが、オタク様一行は、旦那様が懇意にしている組織とは、
かの国で対立関係にある勢力の人々だということでした。
つい私も黙ってしまい、一瞬、非常に気まずい雰囲気に。
しかし、ユウジの機転で、店内裸祭りに。
その後は、乾杯の応酬になり乱痴気騒ぎです。
私が彼らの言葉を話すので、職員氏も々と要求がエスカレートしてきました。
案の定、ここに芸者を呼ぶようにと言い出します。
「芸者なら、ここに居るわ。」そう言ったのはスナックのママでした。
何でもお店を出すまでママは、俗にいう昆布巻き芸者?だったそうで、ショートですとそんなに高い額では無く、
大した稼ぎにはならなかったそうですが、どうやらコーディネーター氏のお陰でママになったようです。
こんな話も面白いのか、職員氏はオタク様と大盛り上がり。
私もお酒が廻りだして、2、3時間もすると、トランプで闘地主をして過ごしていたのが、
いつの間にか、何かを掛ける事になっています。
私が負けたら、私と混浴温泉に入る権利を勝者に与える事にされてしまいました。
職員氏は舌なめずりをしていましたが、ご接待ですから、当然の事に一番勝ったのはオタク様でした。
オタク様、何故かモジモジしています。
オタク様、もしかして、童貞?と、思っていましたが大正解です。
今夜は初物喰いでしょうか。
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