学校が早く終わった火曜日、尚美は家の近所の公園に寄り道した。
梅雨の合間の日差しを待ち望んだように遊具では小学生が遊び、ベンチでは
幼児連れのママさんの会話が弾んでいるようだ。
尚美は公園内を用心深く見渡すとさりげない素振りで公園の隅にある建物に
ゆっくりとした足取りで近付いて行った。
公衆便所だった。
女子用の入口に入る前にもう一度辺りを見回して、誰も自分に注目していない
ことを確かめる。
(もしもあの日、誰かに目撃されていたら…)
3日経ったその日も尚美が現れるのを待ち伏せし、見張っているかも知れない。
そんな不安が尚美にはあるのだ。
公衆便所の中は霧雨模様のあの夜と違って不快なジメジメ感は無かった。
3つ並んだ一番手前の個室だ。
奥の2室も人がいないのを確かめ、尚美はドキドキしながら足を踏み入れ、
錠を掛けた。
和式便器は白く綺麗に掃除されている。
(誰か掃除したんだわ…)
恐らく公園を管理している清掃員だろう。
土曜日の夜中、尚美はここで浣腸し、快感の中で排泄し、中途半端に腰を
上げたために便器と床に排泄物をぶちまけてしまったのだ。
清掃員に申し訳ない気持ちと、自分の汚物を他人に見られた恥ずかしさが
ない交ぜになってこみ上げる。
尚美の記憶が甦る。
あの日の自分はどうしようもない変態だった。
部屋の中で自虐遊びに興じ、宅配ピザの店員に露出しただけでは足りず、
この公園まで出掛けて来て浣腸プレイをしたのだ。
尚美はその時と同じように便器を跨いでしゃがんだ。
壁の下の方に落書きがある。
『マンコしよう』と書かれている。
土曜の夜もあったものだ。
尚美と同じような鬱積した女性が書いたのだろうか、それとも…
筆跡から男女の区別はつかないが、もし男性によるものだとしたら女子トイレに
忍び込む変質者がいると言うことだ。
あの夜も同じことを考え、ゾクゾクした。
(あの夜…)
尚美は全裸だった。
マゾらしく乳房が変形するほど胸縄を掛けていた。
その前に家で自虐遊びをしたまま身体中に猥褻な言葉を書き並べていた。
さらにイチジク浣腸した瞬間も思い浮かべる。
(そう言えばあの空容器はどうしたんだっけ…)
そのまま床に落として帰ってしまったとしたら、それも誰かに見つかったはず。
尚美は手を後ろに回して手首を交差させた。
あの夜は手錠もかけていたのだ。
今、服を着ているのがもどかしかった。
あの時、誰かが私を見つけてくれていたら…
落書きの男性がその時も女子トイレに忍び込み、一部始終を覗いていたら。
「おい姉ちゃん…欲求不満かよ、すげぇかっこうしてるじゃねぇか。」
扉をこじ開けられ、尚美は逃げられない。
「浣腸までしてるド変態かよ…ヒヒヒ、一人でするのは勿体無いから俺が
手伝ってやるよ。」
尚美の頭には土曜の夜にした妄想が再び渦巻いている。
無意識にブラウスの中に手を入れ、ブラジャーの下の乳房を揉みしごく。
表では子供たちのはしゃぐ声が聞こえる中で、学校帰りの女教師は
欲情の渦に飲み込まれて行くのだった。
※元投稿はこちら >>