いつもと逆だな・・・
そう思いながら晴樹は裕子を玄関で見送る
裕子の表情は、少し抜けたように虚ろに見えたが、、、いや遊びにいく訳ではなし当然と自分の考えを否定した
古い友人が突然倒れた、、、そう聞かされたのはつい2日前の事だった
身寄りのない友人を少しでも助けたい・・・そう話す裕子を引き留める術などあるはずもなく、晴樹はせっかくのたまの連休を一人で過ごす事を決意する
一人で過ごすには広すぎる部屋の中で、普段妻が体感しているだろう静寂を感じながらパソコンの前に座る
―――――
不思議な感覚だった
裕子は今でも、その瞬間の衝動が理解できていない
ただリビングでふと目に入った電話器に、引き寄せられる気がした
足を踏み出した時、連絡しなければと思い始めた
その思いは一歩ごとに強まり、受話器を手に取る頃には切実なものに変わっていた
連絡しなくては
もう我慢できない
何度でも欲しい
一番好き・・・
早くしなければ・・・耐えられない
何がかはわからない
けれど裕子の指は、裕子自身も知らない番号を押していく
「もしもし」
野太い声が聞こえる
裕子には覚えのない声
しかしその声は裕子を知っていた
「裕子です」と名乗ると、一瞬の間をおき笑い初めた
男の言葉の意味は理解できないものも混ざっていた
けれど裕子の心は、その通りだと思った
よく連絡してきた
耐えられなくなったんだな
たっぷりやるぞ
もう待てないだろう
我慢できないだろう
早く来い
たっぷり与えてやるぞ
コレが一番好きなんだろう?
我慢できないんだろう?
早く来い
男は待ち合わせ場所を指定し、また嬉しそうに笑いながら電話を切った
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