佐伯龍二(32歳)典堂会三代目筆頭。
いわゆる、昔から地域に根付いていたや〇ざの組長で代々、警察が立ち入らないようなアンダーグラウンドな部分を治安してきた、義侠の一家で、若い時に一人で隣町のや〇ざの事務所を潰したり、そうかと思えば殺人事件を解決した事もあった。
災害や火事があると真っ先に駆け付け町の住民を守った。
一番の語り草は
この町に他所からきた組員が夜町で横暴な振る舞いを行い、それを佐伯一人で乗り込み総勢13人を相手に難なく叩きのめすとその足で叩きのめした組員をつれ、相手組事務所に乗り込み、大暴れ。
乗り込まれた組長は本家筋に応援を要請。
しかし、要請できた精鋭が合計四発発砲し、すべて命中したが、佐伯は倒れるどころか、応援部隊まで退却させた。
驚いたのは、佐伯に乗り込まれて応援を要請された本家の全国的に展開している広域暴力団の組長である。聞けば、悪いのはこちらで佐伯は自ら住み暮らす町が危険にさらされた為の防衛行為であるにも拘わらず、佐伯一人にあたら、怪我人を出してしまった。
広域暴力団の組長は、みずから足を延ばし佐伯と面会。
ここに広域暴力団と典堂会の永久同盟が結ばれた。
これを、この町の住民は誇りに思う者も多い。が、佐伯もやくざである。
ナツオのような小者をつかってシノギを得なければ、苦しい時代でもあった。
しかし、ここしばらくナツオの行動に不振な事が多い。
ナツオが撮ってきたビデオテープに映る女性の大半が隣町等の風俗店で見掛けるとか、入れ墨を入れられ、覚せい剤の売買されてる店に出されている等、どうもナツオ一人が仕切るには、事が大きすぎるのだ。
一方、いつも佐伯の傍らにいる、アキラ。
アキラは、元々は隣町の構成員だったが、例の典堂会永久同盟の発端となった事件の時に叩きのめされた内の一人だった。
元々、アキラも気質は佐伯同様に義侠であった。
しかし、上からの命令だった為、嫌々であった。
しかし、佐伯と出逢い佐伯に惚れ込み、以降は佐伯に付き従う事を決め、行動を共にする決意をした。
このアキラ。
実は、高校、大学時代と空手で全国大会で何度も優勝している。
大学三年の時に予選を難なく快進するアキラに、それを妬む同じく大会優勝候補のひとりがやくざを使い、アキラの彼女を拉致し、アキラに「出場を辞退しなければ、アキラ、お前の彼女がどうなっても知らない」と脅迫された。
そしてアキラは、大会を辞退したにも拘わらず、大切な彼女は大勢のチンピラに輪わされ、自サツした。
アキラは、その後、一旦は警察官を目指すが志望動機に難ありとされ、採用にいたらず。
ならばと義侠の世界に足を踏み入れたのだった。
そのアキラが佐伯の拳に打ちのめされた。
この時にアキラは、自分の拳は佐伯の元でしか発揮は出来ないと悟ったのだった。
勿論、こうした義侠の元。裏ビデオの闇ルートくらいは敷くものの、ナツオのような外道を許す訳もなく。
ましてや、ナツオ独りの事ならまだしも。
ナツオの裏には確実に組織が関連している。
佐伯は、事務所から眺めるこの町の穏やかな風景が好きである。
町を歩けば、惣菜屋の女将が「あっ!!佐伯さん!!ちょっとちょっとっ!!揚げたてだから!!」と湯気の出てるメンチカツを差し出す。
魚屋の前を通ると魚屋の亭主が「あっ!!あっ!!佐伯さん佐伯さん!!いいスズキはいったんだよっ!!佐伯さんにと思って取っといたんだ!!いいから!持ってってよ!」
みんな、警察なんかより、ずっと頼りにしている。
それは、佐伯の先代からも同じ。
佐伯も、この町を愛している。
佐伯が事務所のソファーに深く腰を降ろし、タバコに火を付ける。
それを合図のように若いヒトシがお茶を
「さっ、どうぞ」と差し出す。
このヒトシ。
元は銀行の営業マン。
律儀な性格で数字に強い。喧嘩は全然ダメ。
しかし、ヒトシより他に典堂会の財布を上手く管理できるのはいない。
ヒトシは、2年前、付き合っていた彼女に裏切られ、とあるメンズ風俗に売り飛ばされた。
たまたま、懇意となった町の女性から情報を得た佐伯とアキラでヒトシの身柄を奪還。ヒトシも又、佐伯を惚れ込む一人だった。
佐伯は、ゆっくり、ヒトシの入れたお茶をすすり
「なぁ…ヒトシ?」
「なんです?佐伯さん?」
「お前は、彼女に裏切られて風俗に売り飛ばされただろ?ナツオと同じ。どうだ?」
「は…はぁ…。思い出したくは、無いですけどね…。絶望でした…。死にたかったですよ…。でもっ!!今は、佐伯さんやアキラさんといるし、自分なりに今は楽しいです」
「そうか…」
「でも、佐伯さん?自分ね…ナツオって人。ちょっと可哀想だなぁって思いますよ」
「ヒトシ…可哀想って、お前…」
「だって佐伯さん。ほら、ナツオって人が最後に送ってきたビデオの娘。」
「それがどうかしたのか?」「佐伯さん、よく見てて下さい」
そう言うとヒトシは、ビデオデッキにテープをセットし、再生した。
りおとのセックス場面の前後から部屋を出るまでの一部始終である。
「佐伯さん。ほら?この女の子の顔…」
「ん…?」
「どうみたって、こう言う事を好きでしてる娘の顔じゃなくないですか?身体だってガッチガチだし」
「まぁ、オボコなんだろ?」そしてヒトシが早送りをする。
周りの連中は「ヒトシー!!早送りしてんじゃねー!!こらぁ!!」
佐伯もクスッと笑ってヒトシのやる事を任せた。
早送りが終わり、ナツオと女の子がシャワーから出てきた所でヒトシはテープを止めた。
「佐伯さん。ほら?ちょっと見て下さい。女の子の顔ですよ」
「どれ…?…っ!!」
事の前には、あんなにガッチガチに緊張し、強ばった顔の娘の顔からは、想像できない開放された表情だった。
ナツオが、その娘に「好きだよ」と呟く度に少女とも見える娘の瞳はキラキラとして、胸で大きく呼吸する。
「こ、これは…?ヒトシ?どういう事だ!!」
「佐伯さん…多分ですけど…この娘…処女だったか?初恋?なんじゃないでしょうかね…。それにも気付かずに…この娘も売り飛ばす気なんですかね…ナツオって人」
………
見る見る内に佐伯の顔が紅潮しはじめ、佐伯の表情はいつの間にか憤怒の形相となり
「おい…アキラ…呼べ…。ナツオ…ゆるさねぇ…」
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