~明くる日~
トゥルルル…「もしもし?夏生です。どうも」
「ちょっと、まっちょれや。今、兄貴に替わっからよ…」
「わかりました…」
夏生が掛けた電話の先で、若い男が電話口で
「あにき!!例のナツオとかって奴から電話なんスけど?…」
……
……「おぅ…ナツオ。オメェから電話なんざ…ん!?いい珠(たま)でも見付けたんか?」
「あ…佐伯さん…ども。そうなんスよ…っくっくっく。ガキみてぇな身体で…24だって…クックッ そんで、ありゃぁ殆ど男、しらなそうで…いひっひっ」
「わかった。んじゃ、いつも通りな…。モノは、いつものコインロッカーの1024番だ。いいな?」
「そりゃぁ、もう。わかってますって。」
「おい、ナツオ?オメェ、今回で降りろや…な?」
「さ、佐伯さんっ!!な、なんでです?」
「ナツオ…わりぃ事わぁ言わねェ…二度も言わねェ…いいな?今回で、終わりだ?いいな?」
「は、はい…解りました。佐伯さんがそう仰るなら…」
「よし、んじゃ、後はいつも通りな?」
ガチャ…ツーーーツーツー…
佐伯と呼ばれた男が「仁 義 忠」と書かれた掛け軸の前、受話器を置いて立ち上がり
「おい、だれかアキラんとこ電話いれろ」
若い男が
「はいっ!!」
……
……「あっ…アキラさん。佐伯のアニキに替わります。」
「よう、佐伯だ。アキラ?前にコマシのナツオの運びいったな?覚えてるか?…あぁ、そうだ。また、いっちゃあくんねぇか?…あぁ、そうだ。で、なぁ?アキラ…今度は、ナツオって奴つけて顔をよく覚えとけ。いいな?あぁ、そうだ。モノは、事務所に用意しとく。…あぁ、明日の昼頃までにな。」
一方、夏生。
翌日、午後2時を少し周り、佐伯と言う男に指示されたコインロッカーから、紙袋を取り出し、街中の人混みに埋もれた。
尾行の目にも気付かない。
やがて、ファミレスに夏生が入っていき、そこに、まだ、明らかに幼い幼女とも見える少女が現れた。
「あ、あのぉ…ナツオさん?デート?どこに…?」
夏生さんと出逢って、早いもので、2ヶ月も過ぎて、やっと日常会話らしきお喋りが出来るようになったのです。
そして、あの時にメールと電話番号を交換して、毎日のようにメールと電話でナツオさんとお喋りしたのです。
そして、今日。
初のおデートなのです。
「あはははっ!!りおちゃんのリクエストがあれば、そっち優先したいんだけど?あるかなぁ?」
「わ、わ、わ、私は…そのぉ…ナツオさんと一緒なら…どこでも…」
でも、やっぱり、まだ緊張するのです。
「じゃ、ご飯たべたら、街をお散歩しよっかぁ?」
この頃は、ナツオさんとなら、電話やメールでも、私の顔も綻ぶ事もあって…。ナツオさんの前でも自然と笑顔がでちゃったり。
この時も、そんな笑顔がでてたみたい。
「うん♪」
ファミレスを出て、ナツオさんが黙って私の手を優しく握ってくれて。
私は、そう。
言葉を交すより、こうして触れ合ってる方が、落ち着くのです。
この時、ちょっとアレ?って思ったのです。
前に出逢ってエッチしちゃった時も、その後も、ナツオさんの掌、汗かいてなかったのに?
今日は、寒いのになんだかナツオさんの掌が、少し汗ばんでるようでした。
散歩の途中、ナツオさんがいっぱいお話ししてくれました。
会社の事や、昔の恋人の話。
あちこちに出てる看板やポスターの話や、テレビドラマの話。
とっても楽しくって、なんだか、私もたくさんお喋りできました。
そして、2人の会話も段々と少なくなってきて…。
それは、段々、ラブホテルの派手なネオンが一歩、一歩と進む度に近くなり。
ナツオさんの手にも、僅かだけど、力が入ってきて。
「りおちゃん…いいよね…?」そう言ってナツオさんが足を止めたのは、hotelの前でした。
言葉がだせずに、コクン。゙こんな時って、なんて言えばよかったのかなぁ…゙
そんな事も思う余裕が出てきた自分が、少し可笑しくて、つい
「ふふふっ」って。
外の夜景を壁いっぱいに投影しながら、ゆっくりと昇るエレベーター。
ナツオさんが、優しく微笑んで「めずらしい!!りおちゃん、どうしたの?急にわらったりして?」
はっ!!と、なると私の身体は又、ガチガチ。
ナツオさんも゙しまった!!゙って顔して
「ごめん…」
「い、いえ…」
借りた部屋の前。
私の身体の緊張は最高潮に達して、目眩がしそう…。
全身が心臓みたい。
破裂しちゃいそう。
扉をナツオさんが開けて、まだ、真っ暗い部屋。
急にギュッて抱き締められて
「りおちゃんっ!!りおちゃんっ!!…くはぁっ!!りおっ!!逢いたくて!逢いたくて!堪らなかったんだっ!!ずっと、ずっとっ」
そう言って、まだ真っ暗な部屋。
強く抱き締めたナツオさんの身体は、少し震えていた。
私は、本気でナツオさんとなら、愛しあえるんだと。瞳をゆっくり閉じながら実感できた。
私が「な、ナツオさん…で、でんき…」
「も、もう少し。もう少し…こ、このまま…」
「うん…」
自然だと思って。
ナツオさんの身体の震えも落ち着き
「ごめんね。りおちゃんと逢えて、なんだか…昂っちゃって…」
「うんん。うれしい。」
「り、りおちゃん!!」
そして、シャワーも忘れ、私もどうやって服を脱いだのか?
脱がされたのか?
覚束ない記憶のまま、ナツオさんを受け入れて。
覚えているのは、ナツオさんの重みと愛撫された感触が残る全身。
私を抱く時の真剣な眼差しだった。
ぐったり、してる私に
「シャワーもしなかったね(笑)大丈夫?シャワーいける?」
まだ、ナツオさんも息を切らせながらだった。
私は天井を眺めながら、ゆっくり首を横に振るのがいっぱいいっぱいだったのです。
「じゃ…俺、先に。」
そう言って、ナツオさんはゆっくりバスルームに吸い込まれていった。
うつら うつらと。
こんなHは、初めてだった。
求められて、受けたいと思って迎えた男性とのH。
心が求め、身体がそれにあわせて求める感じ。
身震いしたのです。
それまでは、ただ、誘われて断りきれずに受けていただけの行為。
なんだか、初めて自分が女なんだ…わたし。
そう思ったのです。
いつの間にか、私、寝てたみたいで。
目を閉じていた自分に気付いて目を開けた感じ。
そこに、あの優しいナツオさんの顔があって。
とっても安心したのです。そっとナツオさんが、ベットの中。
優しく抱き締めてくれるとふわぁっとなって。
また、堕ちるように…。
午前2時。
何となく目が覚めて、起きてみる。
そこには、相も変わらないナツオさんの顔があった。
ナツオさんが、起きた私に気付いて目を開ける。
「起きた?シャワーいこうね?」
本気のHだったから?
身体中が重かったのです。それもまた、心地よかったり。
ゆっくり、優しいお湯が私を包んで、本当に幸せを実感してたのです。
バスルームの扉が、ちょっとだけ、開いて
「り、りおちゃん?俺も…いいかなぁ?」
H終わった後って、大分、恥ずかしかったり。
でも、ちょっと嬉しかったり。
「うん。」
ナツオさんがニコニコ入ってきた。
その右手に?
ビデオカメラ?
「そ、それ?撮ってるのですか…?」
「あっあっ、ご、ごめんっ!!嫌だよねっ!!そ、その…りおちゃんを、今のりおちゃんを、どうしても…その…残しておきたくて…ごめん」
あまりにナツオさんの消沈ぶりに
「あっ、そのっ…わ、わたしこそ…その、恥ずかしいなぁ…って…な、ナツオさんなら…だ大丈夫です…」
やっぱり…私は…断れないのです…。
「ほ、本当に?よかったぁ」そのまま、お湯のしぶきの中。
ナツオさんは、私を抱き締めて。
今度は、ゆっくりキスから。
どうしても、私の身体は、勝手にビクンッ!!ビクンッ!!
胸や大事な所にナツオさんの指や、舌が触れ。
直に熱い息が掛かる。
それだけで、私の身体は充血して、水となるのです。「り、りおちゃん?お口で…いいかなぁ?りおちゃんにお口でして貰いたいんだ」
何度か、ソレの経験もある。
ただ、得意ではないのです。
でも、ナツオさんが望んでる。
゙応えたい゙のです。
一生懸命。
口の中で拡がる男性器。
さっきまで、私の中にいた…あの、ナツオさんの男性器は、いとおしかったのです。
ナツオさんのソノ、気持ち良さそうな表情と。
こうして、二度目の逢瀬も瞬く間に朝日に邪魔されてしまい。
再び、お互いの肌を重ね足りない気分のまま。
日常へと戻ったのです。
トゥルル…
「もしもし?俺だ。佐伯だ。ナツオか?で?どうだったんだ?」
「はい、ばっちり撮れてますよ。今、ロッカーいれましたから…よろしくお願いしますね…。」
「おぅ、ナツオもご苦労だったな。まぁ、最後だからよ、報酬額は上乗せしといたからよ。んじゃ、達者でな…」
「あ…佐伯の親分さん。自分、こ…ツーー…ツー…
「ケッ!!腐れ外道がっ」そうナツオの言葉も無視して、佐伯は電話を切り
「アキラ呼べ!!」
間もなく、奥の部屋から、アキラと呼ばれた男が現れる。
「佐伯の兄貴…どうも、俺は、ああいった奴ぁ…」
佐伯の眉もアキラと呼ばれた男の眉も、逆さ八字になっていた。
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