その5
訳が分からなかった。私はナゼ父の運転する車の助手席に乗っているのか。
一体どこに行くと言うのか。これから何が始まるというのか。。不安は募るばかりだった。
車は首都高を銀座方面に進んで行く。父はモノ凄いスピードを出して次々と周りの車を抜き去って行く。
遅い車はクラクションを鳴らし、退かす。
父の運転は父の性格をそのまま表している。
自分勝手で周りの事はお構いなし、無礼で横柄で周りを威圧して
自分の意見は全て通そうとする。父そのものだ。
「チッ!前の車めチンタラ走りやがって!!」
父は役所勤めの公務員のくせになぜか車はベンツのSクラスなのだ。
ベンツにこんな風に煽られれば、たいていの人間は道を譲る。
「愛理。」
私は不意に国雄に話しかけられて、飛び上がりそうになった。
「はい。。」
そして声は震えていた。
「愛理。お前は私の自慢の娘だ。お前は私の理想通りに成長していっている。
だから、今日私は確信を得たいと思っている。」
父は何を言っているのか、私には理解が出来ない。
「確信?」
「そうだ。愛理。お前は俺にとってはカワイイ娘だが、親のひいき目という事もある。
赤の他人からしたら、お前は大したオンナではないのかもしれない。
それでは、ガッカリだし、面白くない。今日はお前がやはり私の自慢の娘であると確信を得たいと思っている。」
オンナ?今この人は私の事をオンナと言ったのか?中学2年生の我が娘をオンナと呼んだのか。
「愛理。着いたぞ。降りるんだ。」
そこはデパートが立ち並ぶ有楽町の駅前だった。
「このデパートで愛理の服を選ぼう。」
国雄はそう言うと足早にデパートのエスカレーターを駆け上がっていく。
2階の婦人服売り場に入ると私と国雄「カップル」は服を選び始めた。
「ちょっと、そこの君。このミニスカートと後はこれに合うコーディネートをしてくれるかな。」
国雄はこのお店で一番短いミニスカートを手に取り、店員の女性にコーデイネートを頼んでいた。
「はい。かしこまりました。」
私の事を見る女性店員の顔はどこか怪訝だった。
きっと私と国雄の関係や私の年齢を計り兼ねているに違いない。
「今日はとても良いお天気ですね。今日はゆっくりお買いものデートですか?」
女性店員は私の年齢や二人の関係を推し量れる材料を得ようとしているのだろう。
私は何と答えれば良いのか、答えに困っていた。
私は中学2年であの男は父親です。それをバラシてはいけない気がした。
「ええ。まあ、そんなところです。」
私の代わりに国雄が答えた。
全身を着替え、試着室を出ると、女性店員がわっ!素敵です!と声を上げた。
国雄も満足そうにうなずいている。
「彼女さんホントにスタイルが良いから、凄くお似合いですよ!」
「よし。一式全てもらうよ。このまま着て帰りたいんだが、構わないかな?」
「もちろんでございます!」
国雄と私はデパートを出て、並んで歩いた。
初めてのヒールはとても歩きにくいし、スカートも極端に短い上にタイトなので、歩いているとずり上がってきそうで気が気ではない。
もうきっと私を中学生と気づく人はいないだろう。
私と国雄が親子だと気づく者はいないだろう。
「よく似合ってるぞ。」
国雄に言われ、改めてガラスに映る自分を確認する。
こんな状況でも綺麗な服を買ってもらえた事、そしてそれを見事に着こなした事に
ほのかな歓喜も感じていた。
我ながら、イケていると思った。国雄は知っているのか分からないが、
私は学園では一番のマドンナなのだ。
もし、この私をクラスメイト達に見せたらどんな顔をするだろうか。
そんな事を考えているうちに私は不覚にもウキウキとした気持ちになっていた。
「お父さん。お洋服買ってくれてありがとう。」
「かまわんよ。そうだ。次はランジェリーを買いに行くとするか。」
「えっ。。。」
「愛理、お前は発育が早いからな。お母さんが買い与えてる下着じゃ、もう小さいだろう?
愛理今胸は何カップだ?」
普通の親子関係ではありえない会話だが、もはやこの程度で驚く事もない。
「CかDカップ。。」
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