その22
「愛理おはよー!」
「愛理先輩おはよーございます!!」
私が学校に着くと丁度高柳も正門をくぐるところだった。
高柳の笑顔はいつものように輝いていた。とても作り笑いには見えない。
あんな壮絶な虐待を受けているというのに、あの輝きと優しい笑顔は今日も全くくもりがなかった。
「愛理ー!おっはよう!!」
「有香おはよー!!」
高柳が正門から教室に向かう間に高柳を中心をした群衆が出来上がる。
いつもの光景だ。
高柳は学校の人気者だ。美しい容姿に加え、誰に対しても分け隔てなく優しく、さばさばした
性格が男女問わず、高柳の虜になってしまう要因だ。
そう。高柳は私にすら優しく接してくれる数少ない生徒の一人なのだ。
高柳は私にハンカチを貸してくれた。全校生徒から「アゴ」というあだ名を付けられ、
軽んじられ、女子生徒にはキモイと陰口を叩かれている私に、高柳はそっとハンカチを差し出してくれたのだ。
「住田先生、先生のくせにハンカチ持ってないの?」
校庭の端の水道で手を洗い、ハンカチを持っていない事に気づき、手をぶんぶんと振って水気を切っているところに
通りかかった高柳が笑顔でそう言い、ハンカチを貸してくれたのだ。
「あっあぁ。今日はついうっかり忘れてしまったようだ。ハンカチ助かったよ。
洗って返した方が良いかな?」
「ううん。いいよ。気にしないで。」
高柳はそう言うと私が手を拭いたハンカチをそのまま自分のブレザーのポケットに戻した。
その日から私は高柳に心を奪われてしまった。
その高柳があんな虐待を受けていると知った今、教師として、いや。
1人の男として私に一体に何が出来るだろうか。
助けてやりたい。。天使のようなあの笑顔が消え失せてしまう前に。。
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