その14
予想外な事が起こった。
いや。予想に反して何も起こらなかったのだ。
私がお風呂から上がると国雄は缶ビールを一本空けて
ソファーで寝入っていた。
昼前にムクッと起きた国雄は部屋で寝る。と言い残して
本当にベッドで寝てしまった。
拍子抜けもいいところだった。自分の被害妄想に呆れた。
何もないではないか。当たり前だ。父が実の娘を犯すなんてあるはずがない。
実際私は父にカラダを触られたりした事などないではないか。
暴力的な父ではあるが、そこまで鬼畜ではないのかもしれない。
安堵した私は自分がもう30時間以上寝てない事に気が付いた。
自室に戻り、ベッドに横になるとすぐ睡魔が訪れた。
昨日の事は全て悪い夢だったのだ。。そう言い聞かせ眠りに堕ちた。
ふと目が覚めると部屋は真っ暗だった。
どれほど寝ていたのか。もうすっかり夜だった。
時計の針は7時を指している。
私は恐る恐るリビングに降りた。そこには国雄と、いつ戻って来たのか、
母と兄の顔もあった。
「愛理。もうすぐ晩ごはんが出来るそうだ。お母さんと正雄もお前の服が見てみたいそうだから
着替えて降りて来なさい。」
「う、うん。」
私は意味が分からないまま国雄に買い与えられた服に着替え、リビングに戻った。
どういう事なのか。国雄は何事もなかったかのように、母と兄とダイニングテーブルを囲んでいる。
そして私はナゼか家で晩ごはんを食べるだけなのに、
目一杯おめかしをした格好でその中に加わった。
とにかく、これ以上何かが起こる事無く、今日が終る事を願うしかなかった。
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