その6
「CかDか。。愛理はこの一年で急激に成長したな。身長はどれくらいになった?」
「161cm。。」
「そうか。もう出会った頃のお母さんにひけをとらないプロポーションだ。実に素晴らしい。」
次に連れて来られたのは秋葉原の駅前にある5階建ての建物だった。
「ここで愛理の下着を選ぶぞ。」
そう言われて見上げた建物には裸に近いような女性が卑猥なポーズで写っているポスターやらが貼られていて、一目でここが女性が入るべきお店でない事が分かる。
ここは多分、エッチな本やDVDが売られている場所だ。
「あの。。ここに入るの?」
「そうだ。」
国雄はそう言うと例の如く、ズカズカと店内に入って行く。
私も仕方なく後を追い店に入ると、そこは想像を絶するほどの男の世界が広がっていた。
見渡す限りエッチなDVDが並んでいる。狭い通路の店内には所狭しと男性客が入り乱れている。
オタクっぽい男性やサラリーマンと思われるスーツの男性。
若い男性もチラホラいる。とにかく店内は男性しかいない。店員さんも皆男性だ。
居たたまれなくなり、逃げ出したくなったが、父はずんずんと階段を上がり、狭い通路を他のお客さん達をかき分けて進んで行く。
私もついて行くしかなく、必死に後を追った。
4階の売り場に到着すると国雄はようやく足を止めた。
「ここで、愛理の下着を選ぶとしよう。」
国雄の視線の先には、私が見た事がないような下着がずらりとハンガーに吊り下げられ、並んでいた。
赤や黒や紫。その全てが極端に布の面積が小さく、そして透けている。
まともなランジェリーショップではない事は入る前から想像できた事だが、
こんなに恥ずかしい下着は今まで見たことがない。
ガーターと呼ばれるモノやアミタイツ、ナース服や体操着、スクール水着などもある。
とりあえず選ぶ振りをしてみるものの、どれを選べば良いのか分からない。だが、選ばなければここから出る事は出来ない。
このお店から早く出たかった。私は気付いていた。段々私達の周りに人が集まってきている事を。いや。私の周りに集まってきている。
遠巻きに見てコソコソと何やら話している者、堂々とイヤラシイ目を私にぶつけてくる者。ニヤニヤと下卑た笑みを浮かべ、私の全身を舐め回すように見つめる者。
オトコ達の視線が恐ろしい。身の危険を感じる程で、全身に鳥肌が立ち、背筋にイヤな汗が伝うのを感じた。
だが、私は忘れていた。一番の悪魔は私の目の前にいるという事を。
「店員さん。ちょっと連れに試着をさせたいんだが、かまわないよね?」
国雄のその言葉に店内の男共の空気が変わるのを感じた。
「試着ですか?あいにくウチは試着とかやってないんですよ。」
店員が国雄の申し出を冷ややかに却下した。
良かった。これで帰れる。そう思った私が甘かった。
国雄が何やら店員に耳打ちをすると店員は私を一瞥するとニヤリと笑い頷いた。
「愛理。試着しても良いそうだ。良かったな。只、ここにはあいにく試着室がないらしい。
まあ、良いだろう?その辺で着替えなさい。」
私は全てを察した。この男は私を見世物にして愉しむつもりなのだ。
オオカミのような眼つきをした男共の視線に晒し、私を辱しめるつもりなのだ。
国雄の狙いが分かった以上、全て国雄の満足がいくまで私がこの店から解放される事はないだろう。
逃げたって無駄だ。第一、どこに逃げるというのだ。
逃げる場所などあるはずがない。この男は私の実の父親なのだから。
私はその場で服を一枚、また一枚と脱いでいった。
オトコ達が息を飲み、私の一挙手一投足を見守っている。
この人達には理解が出来るわけがない。今あなた達の前で服を脱いでいるのは中学2年生の少女で
それをさせているのは実の父親なのだという事を。
これは虐待であり、拷問なのだという事を。
服を全て脱ぎ、国雄を見た。これでもう許して欲しかった。
「どうした愛理。下着の試着をするのに下着を脱がなきゃ意味ないだろう?」
私は諦め、ブラジャーのホックに手を掛けた。すると、「観客」からおー!という声があがった。
ヒソヒソ話が漏れてくる。「あの子は誰?」「これは何のイベント?」
「あの子のDVD後で買おう。ナマで見た後のDVDは100倍ヌケるからな。」
それでいい。私はAV女優なのだ。そう思ってくれた方が良い。
私がA中学の2年C組の高柳愛理だなんて知らなくていい。私自身忘れてしまいたい。
国雄は腕を組み壁に寄りかかっていた。さぞかし、下卑た笑みを作り眺めているに違いないと思ったが、
予想に反して国雄は苛立っていた。足は貧乏ゆすりで顔は鬼のように赤くなる。
これが国雄が怒っている時の症状だが、それに近づいているようだった。
「もういい!!試着はお終いだ。店員さん。この2枚をもらっていくよ」
「観客」から怒声が飛び交う。「なんだよ。こんだけかよ。」「なんだあいつ!止めるんじゃねーよ!」
「やかましいぞ貴様ら!!!!」
国雄の一喝で店内は静まり返り、観客たちは散って行った。
国雄は会計を済ますと物凄い力で私の腕を掴むと私の手を引きながら、大股歩きで店を出た。
国雄は怒っている。だが、何に怒っているのかが私には分からない。
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