久美子の家は街の中心部から外れた駅からさらに20分ほど歩いた古いアパートとラブホテルが立ち並ぶ治安の悪い場所にあった。アパートがあるのだから人通りがもっとあってもよさそうだが、めったに人は通らず、ラブホテルに駆け込む車が時折通るぐらいで恐ろしいほど静かだ。普段は少し警戒しているのだがこの日は精神的に疲れていて無心のまま部屋のカギをあけた。周りをろくに確認せずに。
何かがすごい勢いで近づいてくると思ったときには手遅れだった。何かに口を分厚い布で抑えられ、自分の家に押し込まれた。
「声を出すなよ。声を出したら殺してやるからな。」
ショックでまったく反応できず、どうなっているかもわからなかった。だが目の前にあるものは映画でしか見たことのないような大きなナイフで、その震える切っ先が自分の顔につきつけられていた。恐怖とショックで支配されていた頭が次第に状況を理解し始める。強盗だ。本当はここで叫ぶのが一番正しい方法なんだろう。どこかで読んだが一番の防犯方法は大きな声で助けを呼ぶことだという。しかし久美子はとっさのときに固まってしまい何もできなくなるタイプであった。普段でもそうなのに生命の危機とも呼べるこんな状況ではただ眼を見開き身体を固くするだけで、そんな防犯方法なんて全く思いつきもしない。
「そうだ。何も抵抗しなかったらすぐ終わる。」
男はそういうとナイフを突きつけながら久美子を部屋の奥に引きずるように連れていきベッドに押し倒す。久美子はなにも抵抗せず、強盗が早く部屋の金品を持って出て行ってくれることを願っていた。抵抗したり逃げるなんてことは全く頭になくただただ震えるだけであった。男が口にガムテープを張り付けている時もわずかに首を振っただけで一言も声を発することができずに声を出す手段を奪われてしまった。
だが次に男がとった行動はさらに久美子を恐怖させた。自分の服を破るように脱がせ始めたのだ。その時初めて自分が性的暴行を受けるという事実に気づき、女性の持つ根源的な防衛本能が久美子を暴れさせ、唸り声を上げさせた。急に暴れだした久美子に男はあわてたように押さえつける。なんとかして助かろうと必死に暴れる久美子だが、その抵抗も長くは続かなかった。男が上にのしかかりナイフを顔に突きつけた来たからだ。男の体重にかなうこともできず、生命の危機を感じた久美子は再び恐怖に硬直してしまう。
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