その34
最寄駅の笹塚駅から乗り、新宿で山の手線に乗り換える。普段は近いと感じる渋谷までの距離が途方もなく遠く感じる。
安藤さんに会ったらまず何を話せば良いのだろう。。そんな事を考えていると途端に心臓が早鐘を打ち始めた。
深呼吸をして、自分を落ち着かせるように車窓に映る自分の顔を見返した。
大丈夫。今日はメイクもいつもより上手くできた気がする。安藤さんに子供っぽいと思われたくなくて、少し大人めのメイクにしてみたが、うまくいったと思う。安藤さんは褒めてくれるだろうか。。
その時ふと、視線を感じ体を車内に向きなおすと、複数の男性からの視線を集めていた事に気づいた。サラリーマン、高校生、色々な男の人がチラチラとこちらを見て見ぬ振りを決め込んでいる。
改めて見てみるとやはりスカートが短すぎただろうか。考え始めると、急に恥ずかしくなって赤面をしてしまう。
普段はめったにこんな短いスカートは穿かない。居たたまれない気持ちになり、早く渋谷に着く事を願い車窓から流れる景色を眺めその場をやり過ごした。
目的の居酒屋に着き、私と同い年くらいのアルバイトと思われる店員さんに案内され、2人用の個室に通されると、先に着いていた安藤さんが私に向かって手を上げていた。
「早かったね。」
「安藤さんこそ。まだ、待ち合わせの時間の15分前ですよ。」
私たちは狭い掘りごたつ式の個室に向かい合って座った。
私が座る時、少しだけ、ほんの一瞬安藤さんが私の脚を見た気がした。
それだけで、思い切って短いスカートを穿いてきた自分を褒めてやりたくなった。私の気分は上がるばかりだった。
今日は邪魔者もいない。野川も麻美もいないのだ。
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