その17
安藤さんは私が来る事を初めから分かっていたようにトイレの前で待ち構えていた。
一言、二言、言葉を交わすと私は安藤さんに腕をつかまれ男子トイレに連れ込まれキスをされた。
キスをされた事はイヤではなかったが、安藤さんの気持ちがよく分からなかった。
これが、愛やら恋やらの類ではない事くらいは理解できたが、なぜ私なのか、なぜ麻美ではなく私にちょっかいを出すのか分からなかった。
好きだからとかそんな見え透いた嘘を聞きたいわけではないが、なぜ私なのか、いつから私にこういう事をしようと思っていたのか、納得できる答えが欲しかった。
しかし結局私の言葉は無視され、行為はどんどんエスカレートしていってしまった。私は安藤さんの手で何度も潮を吹かされた。安藤さんの指使いは松田くんのそれとはまるで別次元のものだった。
私は今まで感じた事のない快感に包まれ、もうこのまま安藤さんに犯されたいとさえ願った。安藤さんのおちんちんが見てみたい。触ってみたい。私の中に入れて欲しい。今にも、そう声に出してしまいそうなほどに私の身体は安藤さんを求めていた。
だが、安藤さんもそのつもりだと思っていたが違った。安藤さんは私をトイレに置き去りにして、さっさと戻ってしまった。挙句の果てにその後も私のお尻を撫でまわしたり、私から奪ったパンティーを握らせたり、危険な事をさんざんした挙句、
明日仕事が早いだとかで、あっさり帰ってしまった。
その後は私の頭の中は整理不能なほどにぐちゃぐちゃになってしまった。
私にさんざんセクハラを繰り返した変態男。抱いて欲しいと望んだのに私の願いを無視したイヤなやつ。私より麻美の事が本当はタイプなくせにあたしをからかう最低男。
松田くんとは比較できない大人の男。あたしの見てる世界を一変してくれそうな本物の男。結婚している他人の男。抱かれたい。抱かれてみたい。なぜさっき抱いてくれなかったの?
なぜ、あたしを置いて帰ってしまったの。キライ。キライ。もうやだ。あたしの頭の中からいなくなって。出て行って。
「恵美ちゃん?」
「あっ。はい。」
「六本木に良いとこがあるんだ。ねっ!もう少しだけ付き合って!お願い!」
今にも土下座でもしそうな勢いの野川さんに押し切られるかたちで私は野川さんと2人だけでもう一軒行く事を了承してしまった。
野川さんのいきつけという六本木のお店はとても高級なカラオケ店のようなお店だった。とても大きな個室に大きなカップルソファーが置いてあり
モニターやマイクもあるようで本当にカラオケもできるらしい。ドリンクや食事のオーダーはカラオケボックスと同じしくみで内線で注文するようだった。
「このお店良いでしょ?芸能人とかがお忍びでよく使うらしいよ。」
なるほど、芸能人が悪さをするにはもってこいのお店かもしれない。
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