(ここまで来れば大丈夫…)
恵理子は人通りの多い表通りまで駆け抜け、後を追って来る者がいないのを確かめると、
ようやく立ち止まり息を整えた。
(危険だった…あんな男がいたなんて気が付かなかった…)
小太りで頭髪が禿げ上がったおじさんが見るからにいやらしい顔で現れた時には、
心臓が止まるかと思った。
年は自分の父親よりもっと上だろう。
ギトギト脂ぎり下品な顔つきだった。
腕を掴まれた時は鳥肌が立つようなおぞましさから思わず突き飛ばしていた。
夢中でポシェットを振り回して、逃げ出せて良かった。
(全部見られてたのかしら?)
今思うとお店なんだから店員がいるのに気が付かなかったのは迂闊だった。
でも壁一面に並んだアダルトDVDのパッケージ写真に目を奪われた時から
私はまともじゃなかったのかも知れない。
女の人が裸で恥ずかしい格好で縛られているのを見て頭の中が真っ白になった。
ネットでも見ることはあったが、ああいう店にいること自体特殊な心理状態だったのだ。
そしてマネキンに掛けられた縄に胸がキュンと締め付けられた。
初めて見るバイブレーターは男性のモノに似せているのはすぐに分かって、
あんなものが本当に女性のアソコへ入れられるの?と淫らな想像に耽っていた。
(ここまで来れば大丈夫…)
恵理子は人通りの多い表通りまで駆け抜け、後を追って来る者がいないのを確かめると、
ようやく立ち止まり息を整えた。
(危険だったわ…あんな男がいたなんて気が付かなかった…)
小太りで頭髪が禿げ上がったおじさんが見るからにいやらしい顔で現れた時には、
心臓が止まるかと思った。
年は自分の父親よりもっと上だろう。
ギトギト脂ぎり下品な顔つきだった。
腕を掴まれた時は鳥肌が立つようなおぞましさから思わず突き飛ばしていた。
夢中でポシェットを振り回して、逃げ出せて良かった。
(全部見られてたの?)
今思うとお店なんだから店員がいるのに気が付かなかったのは迂闊だった。
でも壁一面に並んだアダルトDVDのパッケージ写真に目を奪われた時から
私はまともじゃなかったのかも知れない。
女の人が裸で恥ずかしい格好で縛られているのを見て頭の中が真っ白になった。
ネットでも見ることはあったが、ああいう店にいること自体特殊な心理状態だったのだ。
そしてマネキンに掛けられた縄に胸がキュンと締め付けられた。
初めて見るバイブレーターは男性のモノに似せているのはすぐに分かったが、
思ったよりも巨大だった。
震動とうねりに恐怖さえ感じた。
あんなものが本当に女性のアソコへ入れられるの?と淫らな想像に耽っていた。
そもそも恵理子がアダルトショップへ行こうと思ったのは純粋に好奇心からだった。
恵理子は名門高校でもトップクラスの優等生であったが、生来内気なところがあって、
進んで人と交わるタイプでは無かった。
持ち前の美貌から男子生徒に交際を求められることも多かったが、慎重になり過ぎて
二の足を踏んでしまう。
決してそんなつもりは無いのだが、整った顔立ちは理知的であるとともに見る者に
よっては冷ややかな印象を与えかねない。
決してイジメの対象にはならないが、親しい友人がいないのも確かだった。
勉強のささやかな息抜きに恵理子は予備校からの帰り道にいつもと違う道を
歩くことがある。
こんなところに可愛い雑貨屋さんがあったんだ。
ここのパスタ屋さん美味しそう。と思わぬ発見に心を躍らせるのだ。
数日前、いつものように寄り道を楽しんでいた時にあのアダルトショップがある
路地に迷い込んだ。
こんなところにお店がある…何のお店かしら…
地下に降りていく階段の隅に「大人の玩具・DVD」と小さな看板を見つけた。
いや…エッチなお店だわ…!
見つけてはいけないものを見つけた気がして、その日は恵理子はドギマギして
その場所を立ち去った。
恵理子はしばらくそのお店のことが頭から離れなかった。
どんなものを売っているのかしら…
バイブとかって…見てみたい…
恵理子にアダルトショップに対する好奇心が日増しに膨らんで行った。
誰にも相談出来ず、一緒に行ってもらえる友達もおらず、
悶々とした日が続いた。
行ってみようかしら?
変な人がいたらすぐに帰ればいいんだわ。
そう決心したのが昨日のことだった。
(あんな怖い目に遭うんだったら、もう絶対行かないわ…
ふぅ…喉がカラカラになっちゃった。)
恵理子は自動販売機で何か飲み物を買おうとポシェットの中の財布を探した。
(えっ…!?)
財布はすぐに見つかった。
しかしいつも財布と並べて入れている生徒手帳が見つからない。
(無い…どうして! あっ、あの時…)
アダルトショップでポシェットを振り回した時、隙間から抜け落ちたのだと思った。
(あの店に落として来ちゃったの!?)
恵理子は目の前が真っ暗になった。
もしもあのいやらしいおじさんやああいうお店に出入りするお客さんに拾われたら…
恵理子はたった今走り抜けて来た道を重い足取りで引き返すのだった。
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