~第50話~
斉藤は満足した身体を起こしベッドの下に脱ぎ捨てた衣服を身に着け始めた。
それを寂しげにベッドから眺める美香。ほんの数時間の出来事だったが、浩二との寝室に斉藤を迎えた事で、今までと違う気持ちが芽生え始めていた。
もっと一緒に居たい。本当はもっとめちゃくちゃにされたい。だが自分には浩二という夫がいる。そして浩二を愛する気持ちは変わらない。
ここに来た時と同じ恰好に戻った斉藤はずっと不安そうな眼差しを向けていた美香を見つめた。
「どうした・・?ここに俺を入れた事を・・後悔してたのか・・?」
いつものように美香の気持ちを代弁し陥れるセリフ。
今まで効果的に働いていた斉藤ならではの責めだったが、今回ばかりは斉藤の読みが外れてしまった。
それほど、美香の斉藤に対する気持ちの変化が速すぎる証拠でもあった。
「ねぇ・・次はいつ・・会えるの・・?」
斉藤の質問には答えず、予想だにしなかった言葉が美香の口から放たれた。
毎日当たり前のように仕事に行き、帰宅してくる浩二。結婚してから生活の不安も会えない不安も何もない。ところが、斉藤は今度いつ会えるかもわからない。会える時間帯も一緒に居れる時間も限られる。
それが余計に斉藤を強く求めてしまう原因だった。
いつ来るかわからない連絡を待つよりも確たる約束が欲しかった。
「くくっ・・いつ会えるの?・・ねぇ。ここで旦那を裏切った事よりも・・
俺と次いつ会うか・・の方が大事なのか・・?」
ベッドにしゃがんだまますがるように見つめている美香に近づき、無防備だった乳首をキュッと摘まんだ。
「アンッ・・」
「旦那が何も知らずに働いている時間に、自分は寝室で他の男の肉棒を咥えて愉しんで・・悪いと思わないのか・・?」
さらに両方の乳首を巧みに指で転がしながら、美香が罪の意識を失わないよう、
質問を続ける。
「アンッ・・アッ・・ンっ・・そんなっ・・雅彦さま・・」
元はと言えば全て斉藤が仕組んだこと。再会さえしなければ・・
今、目の前でそう言えればどんなに楽だったろう。
これ以上浩二を裏切る事も性の快感に溺れる事もなかった。
だが、もう遅かった。ありとあらゆる方法で責めたてられた美香の身体は
浩二では満足させる事はできない。
薄れかけた罪悪感を煽られ、乳首を責められただけで再び熱くなる身体がそれを物語っていた。
「浩二には悪いと・・思ってます・・んっ・・だけどっ・・アンッ・・身体が・・
アンッ・・身体が・・」
「ふふっ・・身体が・・どうしたんだ・・またこんなに乳首を硬くして・・
俺は約束はしないぜ。次は・・明日になるか・・明後日になるか・・」
敢えて約束をせず、不安と期待を抱かせる事でさらに美香の心までも貶めようとしていた。
「そんなっ・・んっ・・雅彦さまっ・・」
「我慢ができなくなったら、そいつを突っ込んでな。それから・・ちゃんと電池も入れておけよ。じゃあな」
そう言い残すと、背中を向けて階段を降り一人出て行ってしまった。
「待って・・雅彦さま・・」
追いかける余裕もなく、ただ玄関のドアが開閉する音だけが聞こえた。
ポツンと一人ベッドに取り残された美香は火照った身体を沈める気にもなれず、しばらく周りを見回していた。
浩二が寝ている所に転がったままのバイブ。
いつもキレイに敷いてあるシーツは改めて自分がどれだけ乱れてしまったのか、激しさを証明するようにシワだらけになり、二人の流した汗や愛液、精液のシミがあちこちに点々と出来ていた。
この寝室で、今までシーツがこんなに乱れる事もシミができる事もなかった。
最後に枕元に並べられた浩二と美香の写真に目を向けた。
「浩二・・本当にごめんね・・私・・こんな女じゃなかったはずなのに・・でも・・
身体が・・あの人を求めてしまうの・・一度火が点いたら止まらないの・・」
裸のまま写真に向かって謝罪をした。
謝罪しながらも斉藤と会う事は止めない美香。
気がついたら次はいつ会えるかなどと質問をしていた。
それは知らず知らずのうちに心までも奪われようとしている事に美香自身もまだ気づいていなかった。
つづく。
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