約束の日、お店に行くと、隆太がフロントで待っていてくれた。
ただ、その隣には優奈の姿もある。
千晶の心の内も知らずに、梨沙と由貴は早速二人に話しかけ、今日は優奈の奢りである約束を取り付けている。
「わたしはいいよ、この間も隆太くんにおごってもらったし。いつもタダじゃ店長さんに悪いから」
隆太に逢えて嬉しいはずなのに、やや不機嫌そうな声で言う。
梨沙と由貴は驚いたように、千晶の方を見ていると
「じゃあ、千晶ちゃんからはあとでちゃんともらうから。
梨沙ちゃんと由貴ちゃんはサービスで。
二人は隆太くんの知り合いのお友だちだし、素直で可愛いから、いつでも来てくれたときはただにしてあげる。私いなかったらこの名刺ここで見せてくれれば話通しておくから」
大喜びの二人と、優奈の言葉にムッとし、無言で押し黙ってしまった千晶たちのやりとりを困ったような顔で見ながら隆太が部屋に案内する。
途中、
「バカだな、優奈ちゃんがいいって言ってんだから、甘えればいいのに。高校生なんだし」
まだ膨れ顔の千晶に言う。
その言葉に、さらに機嫌を悪くし、二人がいることも忘れて
「だって、この間だって隆太くんにおごってもらったし、あの人に貸しなんかつくりたくないし!」
つい言葉を強くして言い返す。
「貸しも何も、優奈ちゃん店長だから顔見知りにサービスしてくれるってだけなのに」
そんな隆太の言葉が優奈の肩をもつかのように感じられ、
「もういぃ!今日は帰る!!」
三人に言い放ち、入り口の方に引き返す。
そしてフロントにいた優奈に
「やっぱ今日は帰るんで!これわたしの分です」
そう言って財布から千円札を取り出す。
きっちり精算し、お釣りを渡そうとする優奈に
「お釣りいりません!」
と言って出ようとする千晶の手を掴み
「はい、お釣り。貴女に貸しなんかつくりたくないから」
綺麗な顔に怖い笑みを浮かべながら、手に釣り銭を握らせる。
その表情にたじろぎ、そして屈辱に顔を真っ赤にし涙目になりながら店を出る千晶。
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