田中の忠告を受けたせいなのか…
なんとなくだが、あやめを余計意識してしまう。
ダメと言われれば、余計駄々をこねる子供のように。
増してあやめの姿が色めかしく艶めかしく見えて思えるのだ。
あやめの身体を知った以上、あやめに対して自信があった。
出張先とはいえ、同社内では、恐らく自分よりあやめを知った人間はいないとまで自負できた。
自分自身でも
『自分の女だ』と思い定めていた。
まだ、二度しか交わってないが、二度とも相応に濃密であったのだ。
田中の忠告の言葉が、次第に嫉妬へと変わっていった。
『田中のやつ、自分があやめに相手にされないからって。あんな言い方はないだろうに。心のまずしい奴め』
ついつい心で田中を謗り罵った。
そして出張も残り1日となり、仕事も終えた。
あやめのサポートもあってか1日、予定より早く終わらせることができた。
本社のスタッフと出張組と合同で打ち上げとなって会場へ向かった。
辺りはまだ、明るく、陽もでていた。
会場につき、乾杯を済ませ、あちこち酌に周り、自分の席に戻って料理に箸をつけた。
少し遠くであやめが酌に周ってる姿を眺め、手酌で日本酒をちびっとやった。
紺のスーツに黒いローファー。
いかにも普通のOL姿で、笑顔をキラキラふりまいているあやめが、いとおしくさえ見えた。
ふと、田中の姿があやめを視界から隠し目の前に邪魔に現れた。
『やはり、あやめのコト。心奪われていらっしゃるんですね…。』そう言いながら田中は、日本酒の銚子をもち、酌をしようとした手を制して
『それは、私に対しての嫉妬ともとれますが?』
そう答えると
田中は、やんわり微笑み
『昔の話しですよ』そう言って白い歯をみせ笑顔で答えた。
『昔というと?君は、あやめと何かあったのか?』
自分でも、つまらない事を聞いたと後悔したが、言ってしまった後の祭り。
『はい、以前、彼女とは恋人同士でした。』
聞いた瞬間に
やはりか…と、思った。
だが、この後
田中の発する言葉に絶句してしまった。
あやめの過去と…
今、あやめ本人を形成している外見的容姿。
それは、私の想像をはるかに越えたモノだった。
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