朝……。寝惚け眼を擦りながら朝食を済ませ、否応なしに黒塗りの車に乗せられ、会場に移動した。俺は昨日の背広姿そのままだが、彩子さんは昨日とは違う色留袖を着ている。車を降りて建物に入ると、主任とマユちゃんが俺たちを待っていた。
「どうしたんですか? 主任。マユちゃんまで……」
キョトンとした俺の問いに、主任は笑顔で返す。
「あなたが頑張れるように、無理を言って来て貰ったのよ」
マユちゃんも、笑顔で俺を励ます。
「日本代表として、頑張って下さい。応援していますから」
日本代表という言葉が最大のプレッシャーになっている俺は、作り笑いで返すことしか出来ない。
「う……、うん。有難う」
受付で、競技の案内を貰う。注意書には、こう書いてある。
『競技に使う韓国人は、日本国内において犯罪歴があるものおよびそれに加担もしくは逃走の手助けをしたものである。生死に関しては、参加者の判断に委ねる』
要するに……。韓国人粛清のワールドカップという名目で、他所の国の力を借りて、韓国人を粛清する……ということだ。あとで、絶対に各国から叩かれるぞ。
観客席に移動して、競技の開始を待つ。
「緊張している?」
「当然ですよ」
からかうように訊いた主任に、泣きそうな顔で返した俺。そんな俺に、マユちゃんが笑顔で訊いてきた。
「ハーブティー、作ってきたんです。飲みます?」
しかし……。
「宜しかったら、お茶でも……」
主任と俺の会話を聞いた彩子さんも、そう言ってきた。俺の目の前に、両脇から水筒が差し出された。
「おい! まさか……。姐さんの淹れたお茶が、飲めない……と言いたいのか?」
「姐さんの心遣いを踏み躙るとは、いい度胸じゃないか」
案の定……。ヤスとマサが、俺を牽制してきた。マユちゃんも……。
「マユのハーブティー、飲んでくれないの?」
涙を潤ませた目で、俺に訴えてくる。何で、こんな目に遭うんだ? 俺の日頃の行い、そんなに悪いのか? 前門の虎、後門の狼。仕方なく……もとい! 有り難く、両方を頂いた俺であった。
※元投稿はこちら >>