会社から連れ出された俺は、黒塗りの車の後部座席に押し込まれた。ヤスが運転して、マサが助手席に掛けている。後部座席に居る俺と彩子さんを、車載電話が隔てている。
彩子さんの説明によると、日本が会場になっている……とのこと。在日韓国人や来日韓国人が多いせいで、韓国人犯罪者の巣窟になっていること。その理由もあって、他の国や地域に比べ、韓国人犯罪者の粛清がそれほど進んでいないこと。それらが、大きな理由らしい。
昨日までで予選が終わり、明日から本選に入る。日本は、会場国なので予選は免除された……とのこと。今夜は、会場近くのホテルに泊まることになる。日本支部のほうから、予約は入れてあるらしい。
フロントで、彩子さんが鍵を受け取る。
「済みません。俺の部屋の鍵は?」
俺のこの問いに、フロント係は笑顔で返す。
「ツインのお部屋を、お願いされていますので」
「ええっ!」
仰天した俺に、ヤスとマサが詰め寄る。
「何だ? おまえ。まさか、姐さんと一緒の部屋はイヤだ……とでも?」
「おまえは、姐さんの身の回りの世話をするんだよ」
イヤです……と言える訳もなく、ふたりに両脇から押さえ付けられ、彩子さんのあとを歩かされる。連れ込まれ……もとい! 案内されたのは、かなりグレードの高い部屋だ。
「お風呂に、なさいますか? それとも……、先にご夕食を?」
「風呂を先に……」
ひとりになって、頭の中を整理する。そんな時間と場所が欲しい。そう判断した俺は、彩子さんの問いにそう答えた。ヤスがバスルームに走り、浴槽の蛇口を開ける。マサは、俺と彩子さんに紅茶を淹れてくれる。
「どうして、この世界に?」
彩子さんの問いに、気怠そうに俺は返す。
「会社で、会ったでしょう? あの上司に、引っ張り込まれて。彩子さんは?」
「家系の宿命……でしょうかね?」
「えっ!」
彩子さんの笑みを浮かべた答えに、キョトンとした俺。そんな俺に、マサは説明する。
「姐さんの曾お祖父さんは、朝鮮進駐軍を何人も成敗しているんだぞ。それだけじゃない。先祖は侍で、秀吉の朝鮮征伐に参加しているんだ」
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