そういう訳で私は野田君から車を買うことになった。
真奈美の送迎と買い物程度なので一番安い軽で十分なはずが、彼の巧みな話術でハイブリッドの中型車を買う方向に話が進んでいった。真奈美さんのご意見も伺いたいと言って、野田君は真奈美を味方につけてオプションもどんどん増やしていった。
私は今では車の選択も価格交渉も全て主人任せだった。車なんて走ればいいと思っていたが、野田君が色々試乗させてくれた上で熱く語るので車選びがすっかり楽しくなってきた。 それにしても当初の予算をとっくにオーバーしているはずなのに少しも価格交渉にならない。不思議に思って野田君に聞いてみると、価格についてはご主人に聞いてくださいとのこと。夜帰ってきた主人に聞くと、価格は言い値で買うと伝えてあるという。「うちはセレブと言うほど金持ちではないでしょ。やっぱり軽にしましょう」と言うと主人は、実は春から昇格して仕事が忙しくなる、家も開けるし、買い物や真奈美の送り迎えも任せきりになってしまう。その罪滅ぼしに主人のヘソクリで車を買うと決めていたそうだ。それにあいつにも手柄を立てさせてやりたいんだ。と付け加えた。
こんな後ろめたいほど家を開けるなんて浮気を疑うべきかもしれないがそれは有り得なかった。主人は仕事のストレスからか夜がすっかり駄目になっていた。もう2年もしてないので、浮気しても使い物にならないのは実証済みである。それについては多少寂しいと思うが仕事頑張って家族を支えてくれている主人には何も言えなかった。
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