その2
「優衣!早く降りてきなさい!入学式に遅刻なんてやめてよ!」
階下にいる母の怒鳴り声をBGMに朝の支度をするのは高校生になっても変わらないんだな。
そんな事を考えながら、私は真新しい制服に袖を通した。
姿見に映る高校生の私。我ながらキマッている。
大人っぽく見られる事の多い私にはやはり、中学校の野暮ったい制服よりも
この洗練された有名私立校の制服の方がよく似合う。
「お母さん!見て見て!カワイイでしょ?」
キッチンで慌ただしく動き回る母の前でクルリと回ってみせた。
「はいはい。可愛いのは分かったから、早くご飯食べちゃって頂戴。
それと、スカート短すぎじゃない?」
「あっ!大変。。お母さんゴメン。ご飯食べれない。陽菜から今駅に着いたって、LINE来た。」
「あら。大変。お友達待たせちゃ悪いから早く行きなさい。」
「うん!行ってきます!」
「行ってらっしゃい。気を付けるのよ。入学式出られなくて本当にゴメンね。」
「何よ、今さら。いつもの事じゃない。全然大丈夫だよ。お母さんも早く出ないと遅刻するよ!」
私は小走りに陽菜が待つ駅に急いだ。
駅に着くと私よりも更に短いスカートの陽菜が待っていた。
「陽菜おはよう!ごめんごめん!遅くなっちゃった!」
「優衣おはよう!いよいよだね!」
「うん!」
私は陽菜と2人電車に揺られながら、これからの高校生活に思いを馳せた。
部活はどうしようか。中学と同様に吹奏楽部に入ろうと思っているが、まだ決めかねている。
恋愛もしたい。クラスメイトに素敵な男子はいるだろうか。それとも部活の先輩とか?
「ねえ、陽菜。陽菜はやっぱりバスケ部?」
「うん。もちろん!」
私達がこれから通う事になる私立A高校は横浜で屈指のお嬢様学校として知られており、文武両道を謳い、有名大学への進学率の高さ、
部活での華々しい成績、さらには美人女優や朝の番組で人気を博しているアイドルアナウンサーがこの学校のOGである事も手伝い、毎年この少子化時代には珍しい程の倍率になる人気高校なのだ。
そして制服も可愛い事もあり、「彼女にしたい高校」や「合コンをしてみたい高校」などとして男子からの人気も絶大である。この学校の制服を着れるという事はある種の「ブランド」を手に入れたと言っても過言ではないのだ。
その中でもバスケ部は男女共に強く、吹奏楽部は全国優勝の常連校で県内に敵は皆無だった。
「着いたよ!降りよ!」
陽菜に促され、A高校の最寄り駅に降り立つと、そこはA高校の在学生と新入生、保護者などでごった返していた。
洗練された高校生たちに圧倒されそうになりながら、私はスカートをもう2回折り込んだ。
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