ゆかりはこの時、
『この人に抱かれる、いや、支配されるんだろうな』
と、無意識に感じていた。
りょうとの会話は実に楽しかった。
チャットで話していた以上に…。
女性を気遣う優しさに溢れ、巧みに相手を会話に乗せていく。
チャットにはないもの、それは『目』だった。
りょうの目にすっと引き込まれる、なんとも言えない力がそこにあった。
ゆかりは気付くと彼の助手席に座って、ドライブに出かけていた。
それも自らの意思で。
パスタの味は全く記憶にない。
会話の途中、ネイルを見せてほしいと言われさりげなく手に触れるなど、ボディタッチも巧みであった。
ゆかりが慣れていない分なおさら効果的だったのかもしれない。
ゆかりは自分でも夫以外の男がこれほど入ってくることに戸惑いつつも、流れから逃れられずにいた。
『ゆかりさん、静かな所でお話ししていきませんか?』
気付くとホテルの入口に向かう所だった…。
『え!え!こ、こ、困ります…。そんなつもりじゃ…。』
ゆかりは我に返り、言葉を返す。
『お話しだけでもゆっくりしませんか?
他の人に見られるとやっぱり気まずいですし…。
それにゆかりさんともっとたくさんお話ししたいなぁ。』
りょうがゆかりの手にそっと手を重ねてきた。
『お、お話しだけですよ…。』
部屋に入るまでの間、ゆかりの心臓は張り裂けそうなほど、激しく打ち続けていた。
りょうがエレベーターの中で腰に手を回してきた時、体をビクッとさせながら『はぁ…』っと小さなため息をもらした。
りょうはそれを見逃さない。
会話の中からゆかりのM性を見抜いていたりょうは確信をもった。
『こいつは上物だ…。これでもう俺の手から抜けることはできないな…。』
そう心でりょうはほくそ笑んだ。
エレベーターを降り、二人は部屋へ入っていく。
ゆかりの腰に手を回し歩く姿は今日初対面の二人のとは見えない。
重いドアがバタンとしまった瞬間、新たな2人の関係が始まりを告げた…。
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