「さあ、服従のキスを許してあげるから、朝食の支度をなさいな。お湯を沸かして
コーヒーを入れるのよ。パンはそのままでいいわ。」
エレナが浩介の顔を、足裏でヒタヒタと叩きながら命じる。
浩介は礼を言って服従のキスをする。今までで一番永く顔を押し付けていた。なぜ
か顔と頭の痛みは無くなってしまっていた。
台所でヤカンにミネラルウォーターを注ぎ、お湯を沸かしていると、エレナが呼ぶ
声が聞こえた。
すぐに飛んで行き跪く。「何でしょうか、エレナ様。」床に頭を付けて浩介が言
う。
浩介はエレナの前では自然とこういう体勢ができる様になっていた。それも板に付
いた格好でである。
そんな浩介を見下ろしながらエレナが命じる。「コーヒーはこれにするのよ。ブラ
ックでいいわ。ゆっくりとお湯を注いで作って頂戴。」
顔を上げた浩介にドリップするコーヒー袋をエレナが渡す。これもエレナの好みを
考えた、木下が用意した物の様だ。
浩介はそれを両手で受け取る。「はい、解りました。」そう言って浩介は、また台
所に戻る。
お客用のコーヒーカップを準備し、渡されたドリップコーヒーをセットした。
パンを袋から出し、パン用の籠に盛りかえてテーブルに並べた。
その時にヤカンから沸騰した音が聞こえてきた。浩介は言い付け通りにチョロチョ
ロとお湯を注いでコーヒーを煎れた。
浩介は自分の分を作るのを躊躇っていた。エレナと同じテーブルに着くのは分不相
応だと思ったからだ。
主人の朝食を対応した後で、自らの朝食を摂るのが当然という考えだ。
全ての準備を整えてエレナを呼びに行く。
エレナはリビングのソファーでタバコを吸いながらカタログを見ていた。いつの間
にかサンダルを履いている。
大きく組まれた足は、朝日が当たり一層の輝きがあった。スウェットの裾から出て
いる反らされた足先が艶かしい。
その足先に顔を近づける。エレナはカタログを見たままである。
浩介は床に頭を擦り付ける途中に、鼻で大きく息を吸いながらエレナの足裏の匂い
を嗅いだ。
エレナは浩介が自分の匂いを吸い取ろうとした事に気付いていたが、そのまま様子
を見ていた。
浩介は、顔全体を床に付ける様にして畏まり、エレナに向かって用意ができた事を
告げた。
その後頭部にエレナがサンダルの足を載せる。床に浩介の顔全体が押し付けられ
た。しかし痛くは無く、優しい荷重だった。
「そうよ、あたしの前に跪く時は、いつでも顔全体を床に擦り付けるのよ。強く踏
み付けられても、それは自分が悪いのだから。」
「はい、いつでもこの姿勢を守ります。」自身の身分を確認する様に浩介が答え
る。
エレナの足が、もう一度身分を確認させる様に押し付けられる。
浩介は固い床に顔を押し付けられながら、構って貰っている礼を述べた。
「四つんばいで付いてくるのよ。」エレナはそう浩介に告げて、台所に向かった。
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