「今何時なの。」エレナが浩介を自分の胸から離しながら聞いた。
浩介はすぐに姿勢を正して跪く。頭を擦り付けて答えた。「4時になったばかりで
す。」
「じゃあ、走るよ、お前も付いておいで。」エレナが命じた。
エレナは朝のジョギングが日課になっていた。体調管理の面でもプロポーションを
保つ意味でも続けていた。
エレナは昨日購入した品物の中から24カラッツのスウェットを取り出した。Tシャ
ツはエルメスだ。
「お前も早く用意なさいな、置いてくわよ。ほら、急ぐのよ。」着替えながらエレ
ナが言う。
エレナに急かされ、浩介も用意する。学校の体操着くらいしか無かった。
季節は夏だが、まだ薄暗い。エレナに尋ねると、3~5kmくらい走ると言われた。
ここから学校までが、約1kmなので、その先の通りまで出て折り返せば、およその
距離になる。
浩介はエレナに了解を求め、承諾を受けた。ジョギングのスタートだった。
半歩後ろから、浩介がコースを案内する。並木道で歩道が広く、走り易いコースだ
とエレナが褒めた。
浩介は嬉しくなって付いて行く。だが途中から浩介のペースが落ちる。体力が無か
ったのだった。
いつも部屋に閉じこもりゲーム三昧の体は、小6といえども不摂生が祟っている証
拠であった。
エレナのペースは落ちない。浩介は仕方なく手前で曲がる様にエレナに告げる。
何とか家まで辿り着いたが、エレナの方は不完全燃焼ぎみだった。およそ2kmちょ
っとしか走っていないだろう。
エレナは浩介の狡さに少し腹を立てたが、また同じコースを一人で走って帰ってき
た。
玄関を開けると、浩介が跪いている。エレナを確認すると、本当に申し訳無さそう
にしている。
「エレナ様、ごめんなさい。全然役に立ちませんでした。」そう言って、頭を擦り
付けていた。
エレナは無言で浩介の頭に足を載せた。もちろんジョギングシューズを履いたまま
である。タオルで汗を拭っている。
「役に立たない奴隷はいらないわ。」厳しい口調が浩介に刺さる。
「ごめんなさい、ごめんなさい、エレナ様。」浩介が必死に謝る。またエレナを怒
らせてしまった。
「どうして付いてこなかったのかしら。」エレナは強く浩介の頭を踏みながら尋ね
た。
「うぅー、ごめんなさい。」踏まれている頭の痛みに耐えながら、浩介はそう答え
るのがやっとだった。
エレナは考えた。浩介はもうすぐ学校である。今痛め付けると休ませる事になる。
初日からそれはまずかった。
一目見た時から体力が無さそうなのは見抜いていたし、これ以上の体罰は止めてあ
げる事にしようと思っていた。
「このまま上がれる様に裏を舐めなさい。」そう言って靴裏を浩介に向ける。
「はい、有難うございます。」浩介にはご褒美みたいなものだ。夢中で舐める。
新品のシューズだったが、裏は汚れていた。舌に砂や小石の感触を感じながらも、
丁寧に清拭した。
「こっちもよ。」頃合を見てエレナが、乱暴に足を代えて浩介に命じる。
左右とも綺麗に舐めた。浩介はこれが罰なら何度でも受けてもいいとさえ思ってい
た。
「口濯いできなさいな、リビングにいるから。」エレナは浩介の顔を蹴る様にして
告げた。
「は、はい。」言い付け通りに口中を洗う。歯も磨いた。そしてエレナの待つリビ
ングに急いだ。
エレナはソファーに座ってタバコを吸っていた。高く足を組み、足先を揺らしなが
ら浩介を睨み付けている。
「遅いわよ、お前は、甘えてるの。」エレナの叱咤だ。
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