「ごめんなさい。でも舐めてはいません。僕はさっき、あのまま踏み殺されてもい
いと思ったけど、エレナ様の足の裏が助けてくれました。
それでお礼を言っている内に、足の裏がすごく綺麗だったし、踏まれた事が嬉しく
なってしまって、ずっと尽くせる様に祈っていました。」
浩介はなおも済まなそうに謝っている。
「あははは、あたしの足の裏にお礼を言っていたのね。どうなの、足の裏は返事し
てくれたのかしら、フフフ。」
笑いながら聞き返すエレナに、浩介がキッパリと答えた。
「エレナ様の足の裏に祈っていると、心から安心できるのです。どんな事でも願い
を叶えてくれると信じています。」
エレナは考えていた。もうここで浩介を仕上げてしまおうかと思い、意思の最終確
認の為、浩介に顔を上げさせる。
「あたしじゃ無くて、なぜあたしの足の裏なのかしら。」
「エレナ様から僕との境界と言われた場所だし、僕の居場所はエレナ様の足の下だ
から、足の裏からの対話が当然だと思っています。」
浩介の言葉にエレナが念押しする。「お前はそれで満足できるの。言った事はもう
否定できないわよ。」
「それでもエレナ様に構って貰えるのなら、これ以上嬉しい事はありません。十分
に満足できます。」
「お前はあたしのウンチも食べたからね。そもそも人間扱いはもう出来ないし、こ
れからは足にも触れさせないかもしれないわよ。」
「エレナ様の意思に従います。これからも厳しくしていいです。」
「一通りお前はあたしを受け入れたわ。それは認めてあげる。でももっと厳しくな
るわよ。人前に出られない体にしちゃうかもしれない。
いつもお前はあたしの顔色を伺っていなくてはならないし、指示する前に動く事を
求めたりするわよ。それでもいいのかしら、お前は。」
「はい、全てをエレナ様から教わりたいです。エレナ様に満足して貰えるのが、僕
も嬉しいですし、そう出来る様になります。」
「お前はまだ10歳そこそこなのよ。これからの出会いや楽しみを全て棒に振ってで
もあたしに仕えると言うのね。本当にいいの。」
「エレナ様以上の人に巡り合う事は無いと思います。後悔もしません。」浩介が覚
悟を決めた様に答えた。
若干の静寂があった。エレナにはこの若すぎる奴隷を持つ事に、躊躇いが無いとは
いえなかった。
しかしこの従順な態度に、今迄エレナの周りに居た他の奴隷候補とは、違う純粋さ
を感じていた。
打算的なところが無いのだ。打てば響く様な浩介の対応に、エレナは今から自分好
みに育てたい欲望に駆られていた。
「あたしの奴隷になりたいと、そう本気で望むのね。ならどう扱われても構わない
という決心があるのかしら。」
静寂を破る、凛としたエレナの声が響いた。エレナは真っ直ぐに浩介を見ている。
「僕で良ければ自由にして下さい。エレナ様の奴隷になる事が、僕の、僕の一番の
夢です。」
浩介もエレナを見ていた。涙で霞んでエレナの顔がぼやけて見えていたのが幸い
し、視線を逸らさずに済んだ。
しばらくしてエレナが決心した様に口を開く。
「解ったわ。特例として奴隷にしてあげるわ。この関係はお前からは解除できない
わよ。あたしが棄てるか、お前が死ぬまで続くのよ。」
エレナの言葉に、浩介は感極まってその場に突っ伏した。声を上げて泣いている。
エレナが浮いた方の足裏で、浩介の頭を優しく撫でた。
「エレナ様ぁ、有難うございますぅ。」そうお礼を言うのが精一杯と思える程、感
動しながら泣きじゃくっていた。
「じゃあ浩介、付いておいで。」エレナはそう言ってリビングの方に向かった。浩
介が四つんばいで後を追う。
リビングのソファーにエレナが座る。「電気付けて。」短く浩介に命じた。
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