押入れから毛布を出し、裸のまま床に寝ころがる。勿論頭はエレナの方を向いてい
た。
背中の傷が絨毯に擦れて疼く。熱も上がっている様だった。体中が痛くて眠れなか
った。
悪寒が始まり、具合が悪くなって一旦起きる。エレナを見ると気持ち良さそうに眠
っていた。
月明かりに映るエレナのシルエットが眩しい。浩介はこの女神に仕えている自分が
幸福だと強く感じていた。
シングルベッドでは窮屈そうな肢体が横たわっている。浩介はエレナの頭の先か
ら、順に眺め降りながら見ていった。
仰向けなのにバスト部分がキュっと盛り上がり、逆にウエスト部分は錯覚するほど
平らで薄い。
適度な厚みの臀部から足先へのラインは、日本人では見た事が無いほど長く、流れ
る様なシルエットを誇っていた。
浩介は具合が悪いのも忘れて、エレナを見ていた。
今までもそして今後も、エレナが寝ている場面でないと、眺める勇気は持てないだ
ろうし、こんなチャンスは滅多に無いと思われた。
エレナを見たり、眺めたりすると、浩介は他の感覚が無くなる。エレナを想う時間
が、浩介にとって一番幸せな時間になっていた。
痛みや苦痛も、エレナの事を考えると和らぎ、接すると無くなる。いつしかエレナ
の事しか考えられなくなっていた。
ふとエレナの右足がずれた。寝返りと違うが、タオルケットから右足だけが出て、
ベッドの淵に止まる。
浩介は息を飲んだ。エレナの素足が目の前に現れたからだ。座る位置を後方に移動
し、足裏と対峙する様に跪き直した。
エレナの足裏は大きい。自分の顔などすぐに隠れてしまう。エレナの足裏だった
ら、皺や汚れであっても美しく思える。
この足裏になら、自分はどう扱われても後悔しない。この先の運命は、目の前の足
裏に服従してからが始まりだと感じていた。
浩介はエレナの足裏に向かって宣誓させられた事を思い出していた。感激して覚悟
を決めた場面が浮かび上がる。
今は背中も痛いし、悪寒もしていて具合が悪い。この足裏にお願いすれば、良くな
るかもしれないという考えが自然に浮かんだ。
エレナに縋れば良くなるという錯覚に陥ってしまっていたのだった。でも浩介は本
気だった。
「エレナ様お慈悲を下さい。足裏様助けて下さい。お願いします。」頭を下げて言
った後で、足裏に向かっても言った。
交互に呪文の様に繰り返した。言いながら浩介は泣いていた。具合が治らなかった
のでも無く、背中が痛いからでも無かった。
エレナという女神に仕える事が、嬉しくて泣いていたのだった。最後には足裏に耳
打ちする様にお願いを続けていたのだった。
横たわる女神の足裏に、本気で願い事をする、家畜以下の身分になった浩介が泣い
ていた。
顔を踏まれ、蹴られ、鞭打たれ、足裏を舐め、オシッコを飲み、屁を嗅ぎ、アナル
と股間に奉仕し、あげく糞まで食わされたのである。
およそ浩介以外では経験しないであろう、道徳観の欠片も無い行為が、浩介に達成
感と隷属意識を植え付けてしまっていた。
女神の足裏に、身分を約束させられた自分だから、足裏に願い事をするのは当然で
あった。
呼吸ができない程に足裏で顔を圧迫されて、生かすも殺すも自由だと女神の声が聞
こえていた。
この足裏が、あのまま顔を圧迫したままなら、確実に自分は死んでいた。この足裏
のおかげで自分は助かったのだった。
「有難うございます足裏様、助けて下さい足裏様、導いて下さい足裏様、罰して下
さい足裏様、お願いです足裏様、足裏様、足裏様ぁ。」
浩介は涙声で唱えていた。少し声のトーンが高かったのかもしれない。
エレナが起きてしまっていた。只ならぬ雰囲気を感じて、目が覚めたようだった。
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