「ケースからドライアーと化粧水取って。」ふいにエレナの命令がくる。
ドライアーは解るが化粧水が解らない。エレナに教えられながら準備できた。
何も解らない自身を呪った。まだまだな自分を恥じていた。
さっきエレナが役に立たないというのも納得できた。教えられないと何も解らない
のであった。
立ち上がってエレナの方まで歩き、言われた物を手渡した時だった。
「跪いてもいいわよ。」唐突にエレナが口を開く。
浩介はえっという感じで、信じられずにエレナを見た。
「跪きたいんでしょう。許してあげるから早くしなさいと言ったのよ。」もう一度
はっきりとエレナが言った。
「はい、有難うございます。」浩介はそう言ってすぐに跪き、床に頭を擦り付け
る。
「あはははは、様になってるわよ、格好が。お似合いかもね、お前には、フフ
フ。」化粧水を馴染ませながら、エレナがからかう。
「その通りです。幸せです。ずっとこうしていたいです。」浩介が本心からそう答
えていた。
「条件の他に、この事はノブ子には内緒よ。それにノブ子の前でもいい子になりな
さい。約束できる。」エレナが確認する。
「解りました。絶対に約束します。」浩介は答えた。
エレナと2人だけの約束だった。そう考えると浩介は目頭が熱くなった。
対してエレナには、違う狙いがあった。結果的に浩介とノブ子を隷属させたが、仕
上げるのはノブ子を先に考えている。
それを浩介に邪魔されたくは無かったし、浩介が秘密をどこまで守り通せるのか試
したかった。
ノブ子にも同じく、浩介には秘密だと命令するつもりでいるし、浩介を隷属させた
事は教えないつもりでいる。
「お前はいい子だわ、あたしにして欲しい事あるのかしら。」エレナが浩介を褒め
る様に言った。
浩介は嬉しかった。エレナに服従を誓いたかった。服従といえば足への口付けしか
無い。これは万国共通である。
しかし浩介は自分にはまだ足らない事ばかりだと自覚していた。素足に口付けなん
て、おこがましいと言われると思った。
しかし足に代わるところなど無い様な気がする。結論を出せないでいたが、早くし
なければと考えて返答した。
「恐れながらおみ足の裏で結構です。どうか服従の口付けをさせて下さい。」恐る
恐る聞いてみた。
「あははは、もうりっぱなもんじゃない、あははは、可笑しいわね、お前。でも駄
目よ、まだ早いわ。」エレナが言った。
やはり駄目なのか。謝ろうとしたその瞬間にエレナが口を開く。
「この床にキスなさいな。それなら許してあげるわ。お前にはちょうどいいご褒美
だと思うわよ、どうかしら。」そう言って足をずらした。
「はい、光栄です。」浩介はそう言って床にキスをした。エレナの足の温もりが残
っている。ゆっくりと顔まで押し付ける。
「クックック、特別に舐めてもいいわよ。今日は木下にもさせていないわ。許した
のはお前だけよ。」
少年の屈服を確認したエレナが、含み笑いをしながら言う。
しかし、そのエレナの言葉に浩介は歓喜した。涙が止まらない。床を舐める度に、
涙でエレナのエキスが床に溶けていった。
歓喜の涙を知らなかった人間が、知らない内にその涙を流している。
浩介には自覚は無い。ただ無心に、自分の涙で溶かしたエレナのエキスを舐め続け
ていた。
その浩介の様子を上から見ていたエレナは、とうとうこの家の2人共に、同じ事を
させているのだと半ば哀れんでいた。
割り切って考えたがどうしようも無い。自分の足の下に居る運命で生まれてきた2
人だと、思わざるを得なかった。
「さあもう終わりよ。汚いからこれで拭いて寝なさいな。」エレナは言って髪を拭
いていたバスタオルを浩介に投げ付けた。
「はい、有難うございました。」返事をして浩介は、そのバスタオルは使わずに、
布巾を持ってきてそこを拭いた。
エレナの持ち物に、自分の汚れを付けたくは無かったのだ。その布巾を片付けて、
再びエレナの足元に跪く。
「おやすみなさい。」言って頭を下げた。
一連の所作を見ていたエレナは、小学生にしては従順さが身に付いている浩介に、
ノブ子とは違う可愛さを感じていた。
「顔を上げて、目を瞑りなさい。おやすみのキスをあげるわ。」そう言い浩介の顔
を上げさせる。
浩介は言いつけを守り、目を固く閉じて顔を上げ、唇を窄めている。
「明日から頑張るんだよ、ほら。」勢いを付けたエレナの足裏が、浩介の顔にまと
もに叩き付けられた。
予想に反した一撃に、受身も取れずに無様に転んだ浩介だったが、すぐに起きてエ
レナに御礼を言った。
「有難うございます。」目の前がチカチカしていたが、辛うじて言えた。
「どう、これからはどこまでがご褒美だか解らなくなるかもよ。ンフフ。」礼を言
う足元の浩介に、エレナが言い聞かせる。
「言い付けは、絶対守ります。エレナ様、どうかよろしくお願いします。」素直に
エレナ様と口に出せた。
浩介は顔面が痛いのを我慢して、エレナの次の言葉を待っていた。
「ウフフ、もう後戻りできないからね、おやすみ。」そう言って頭を軽く蹴られ
た。
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