「顔をお上げ。」ノブ子の頭に置いた足をどかし、エレナが言った。
一瞬目と目が合ったが、すぐにノブ子が逸らした。その顎につま先を掛け、エレナ
が上を向かす。「顔を上げなさい。」
ノブ子は改めて見るエレナの美貌に目がくらんだ。殺されてもいいと思ってしまう
ような美しさだった。
虫になって踏み殺されても本望だとさえ思う。この美神の前では自分なんか存在価
値さえ無いと本気で感じていた。
その美神が口を開いた。「家庭教師はやってあげる。その代わりお前があたしの意
に反した瞬間に辞めるわよ。」
顎に掛かった足が退けられる、床に頭を擦り付ける。「感謝します、エレナ様、命
令には絶対服従します。」
一体何回目の宣誓になるのだろうか。いや何度でもやりたい。絶えず何か命令して
ほしい。
そんな事を思いながら、頭にかかる荷重を待った。きっと踏んでくれると思ってい
た。
「解ったわ。」短くエレナは答えた。続けて「時期だとか曜日だとかは後で連絡す
るからお前が調整するのよ。解った。」
「解りました。エレナ様のご都合に合わせて、調整します。」今度こそ、の願いを
込め、床に顔を打ち付ける様擦り付けた。
「あはははは、すごいわねお前、ただでさえ醜いのに、そんな事すると顔の凹凸無
くなってしまうわよ。」無邪気にエレナが笑った。
ノブ子にとってはただ踏んで貰いたかったのだ。
それを見透かした様にエレナが言った。「踏んでもらえないのよ。残念だけど
ね。」
愕然としたノブ子が顔を上げた。まぶたが腫れ、鼻血も出ている。恨めしそうに美
神を見る。
「あはははは、そんな悲しそうな顔しないの。そうねえ、お願いしてごらんなさい
な。」ノブ子は狂った様に床に顔を打ち付けた。
鼻血が出て衝撃で気を失いそうになりながらも、踏まれたい一心で懇願した。仰ぎ
見る美神の顔はなぜか笑っていた。
「どうされたいの、お前は。」呆れながらもお聞き下さった。「せめて踏んで下さ
い。」「どこを。」「頭を踏み付けて下さい。」
必死の懇願が続いている。「頭を踏まれたいの。でも足でなんて悪いわ。」意地悪
く美神ははぐらす。「お願いします~。」
最後は涙の絶叫だった。しかし答えは「いやよ、あたしのミュールが汚れるでしょ
う。」であった。
「褒美ばっかり欲しがる犬には興味無いわよ。うふふふ。」跪き、うなだれた頭上
で美神の声が聞こえた。ノブ子は打ちひしがれた。
「馬鹿な奴隷を許して下さい。もう絶対にされたい事なんて言いません。約束しま
す。」涙と鼻血が混じった床にまた顔を打ち付けた。
「完全に堕ちたわ。」狂った様に謝罪を繰り返す、哀れな醜女を見ながら美神は確
信した。1時間足らずで、屈服させた。
「あはははは、よいしょ。」全体重をのせた片足がノブ子の後頭部に乗った。「ギ
ギギギ。」頭蓋骨がギシギシ鳴った。
口も利けない程の痛さが、頭を発信源に全身にかけめぐる。「どう、気持ちいい、
今度はこうしてあげる。」
片足は後頭部のままで、もう片足を背中に乗せてバランスをとっている。「イギギ
ギギギ。」痛さで声が出ない。
フローリングの床に顔を押し付けられ、背中にヒールを突き立てられているのだ。
それも全体重を掛けて。
痛さで気が遠くなる。一体どのくらいの時間が過ぎただろうか。この痛みは、拷問
に近いおぞましさであった。
「はい、終わり。」やっと足が退けられた。ノブ子は全身の力が抜け、肩で息をし
ていた。背中からも血が出ていた。
「お礼は、ふふふ。」何度目の土下座だろう。摺り付けた頭に今度は容赦のない荷
重が加わった。「お礼を忘れたら駄目よ。」
美神の言葉に反抗はできない。ノブ子は心からの謝罪を繰り返した。「楽しいバイ
トになりそうだわ。」エレナは笑っていた。
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