ソファーに深く座り、ミュールの裏に付いた血を、足元に横たわるノブ子の体で拭
き取りながら、エレナは携帯でどこかに電話を掛けた。
「あたしだけど、また壊しちゃった。」
電話の相手は医者の様だ。口調からしてエレナの奴隷の一人だろうか。命令口調で
話している。
「住所は言ったわね。すぐ来るのよ。10分で来なさい。」
電話を切ったエレナは、タバコに火を付けた。「吸うのも忘れていたわ、フフ
フ。」
呟く様に言い、煙をノブ子にかけた。
吸い終わる頃にチャイムが鳴った。電話の相手の男だった。医療の道具を持参して
きている。
「割と早く来れたわね。」まだ5分も経ってない。
玄関に立つエレナの前に男は跪く。「エレナ様にご指名いただき、感謝していま
す。」
その頭をエレナが蹴る。「有難うございます。」男が礼を言った。
「奥にいるから診て頂戴。」エレナが指示を出した。「失礼します。」そう言って
男は中に入った。
ノブ子を診た。言葉が出ない。何人かのエレナに調教された人間を治療したが、今
回は特別だと感じた。
「死んじゃう。」ドキリとするセリフをエレナが言う。
「命の心配はありません。ただ女の方ですよね。顔が元通りにならないと思いま
す。」男が冷静に答える。
「あはははは、そんなの大丈夫よ。傷が残ろうが、鼻が曲がったままだろうが心配
ないわよ。歯も全部抜いて、総入れ歯にするのよ。」
男の答えにエレナは言い放った。「そうだわ、裂けた口も広げたままにしておい
て。」続けてエレナが言う。
「かしこまりました。でもここでは無理です。連れて行きますけどよろしいです
か。」男が聞いた。
「解ったわ。じゃぁ部屋をお前が片付けて、その後連れてお行き。」
エレナの命令に男が答える。「では手配してもよろしいですか。」男の口調では一
刻を争う様だ。
「いいわよ。そのかわり面倒な事になるのは嫌よ。」「心得ております。」男はそ
う答え、どこかへ連絡した。
程無くして一団が現れ、ノブ子を運んで行く。
男は簡単に指示を出し、戻ってきて跪いた。「数週間の入院が必要かもしれませ
ん。」
男の言葉にエレナは、「一週間だけは許すわ、それ以上は駄目。来週の今頃までに
届けるのよ。」そう言い放った。
「解りました。エレナ様の仰せの通りに致します。」男は頭を床に擦り付けながら
言った。
「お前にもう用は無いわ。片付けを済ましたら早く帰って頂戴。」エレナが冷たく
言う。男は黙って片付け始めた。
それ程散らかしたり、汚したりしていなかった事もあって、簡単な整頓と拭き掃除
で完了した。
「ではエレナ様、帰らせていただきます。」男が跪いて頭を擦り付けて挨拶する。
最後だから踏んでやろうと、足を男の頭に載せたエレナは、ふとその足先を見て思
い出す。
「お前、浴室から洗面器にお湯を入れてきてこの足を洗うのよ。」男にそう命じ、
顔の前で足指をクネクネと動かす。
「有難うございます、エレナ様。」男は浴室に飛んで行った。
「失礼します。」戻るとそう言って、丁寧にエレナの足を洗いだした。
「踝から下だけよ。他に触ると許さないわよ。」男は一つ一つに返事をしながら、
左右の足を洗い終えた。
「有難うございました。」頭を擦り付けて礼を言っている。足を洗わせてやった事
への礼であった。
「その洗面器の中身、飲んでいいわよ。」男は歓喜した。
エレナは素足で男の頭を踏むのが嫌だったから、それをさせただけだった。
男は一気に飲み干した。底に残った汚れも舐めている。
「おいしいの、そんなもの、ふふふ、さあもう終わりよ。洗面器を洗って仕舞って
きなさい。それとついでにこれも洗ってきなさいな。」
エレナは足先に挟んだミュールを男に放った。「舐めたりしちゃ駄目よ。丁寧に洗
ってくるのよ。」
男はミュールを捧げて持っていった。
きちんと洗い終え、エレナに挨拶し、男は部屋を出て行った。
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