浩介が登校し、浩介の母親も出掛けていった。これから1週間近く、この家で浩介
と2人きりである。
いつもの様に洗い物と洗濯を済ませ、今週分の献立を決め、買出し品のリストを作
成しているとチャイムが鳴った。
玄関の扉を開けるとそこにはエレナが立っていた。「エレナ様。」その場に跪い
た。
「人に見られるわ。入るわよ。」エレナが言う。
「は、はい、解りました。」ノブ子はそう答え、急いで立ち上がりスリッパを用意
し、エレナが入った後の扉を閉めた。
エレナはスリッパの用意に気付いていたが、口元に笑みを浮かべ、土足のまま入っ
ていった。
「犬の家だからいいわよね。」正論だった。昨日も途中からは、土足のままだっ
た。
「も、もちろんです、エレナ様、そのままで結構です。」ノブ子がすぐに返事をし
た。
しかしエレナは、ノブ子の返事を待たずにズカズカと上がった。
そしてソファーに座りタバコに火を付けた。「灰皿、それと冷たい物。」エレナが
短く言った。
急がないと叱られる。ノブ子はできる限りの速さで準備した。「ここにお座り。」
目の前の床をミュールが叩く。
ノブ子はすぐに跪き、頭を下げた。
「顔をお上げ。」麦茶を一口飲み、エレナが言った。
また今日も踏み付けてもらえないのか。顔を上げたその顎に爪先が掛かる。
「昨日の調教が生きてるわね。これからもすぐにやらなきゃ痛い目見るわよ。」
爪先が外される。「エレナ様のおかげです。有難うございます。」そう言ってまた
頭を下げた。
「もっと擦り付けるのよ。」突然だった。
ミュールの足が蹴る様に頭を踏む。「昨日はそんな頭の下げ方じゃ無かったでしょ
う。甘えてるの、お前は。」当然の叱責だった。
「はい、エレナ様、本当に申し訳ありません。許して下さい。」床に顔を何度も打
ち付けられる。手加減が無い。エレナは怒っている。
昨日と同様で、泣きながらの謝罪になった。「ぼ、ぼんどうに、ご、ごべんださ
い、ゆるじてぐださい。」声にならない謝罪が続く。
やっと踏み付けが終わる。また怒らせてしまった。ノブ子は自分の至らなさを恥じ
た。
「ふん、顔をお上げ。」頭上からエレナの声がする。ノブ子がすぐに顔を上げない
でいると、頬を軽く蹴られた。
「言われたらすぐに上げるのよ。」顎に爪先が掛けられ、強制的に顔を上げさせら
れた。
「無様に顔が腫れてるじゃないの。いい顔だわよ。」顎に掛けてある足はそのまま
だ。ノブ子は迷ったが、そのままお礼を言った。
「あはははは、別に褒めてる訳じゃないのよ。ふふふ。」顎の爪先が外され、ノブ
子の目の前でミュールが返った。靴底が見える。
「涙まで流しちゃって、お前がいい子だったら痛い目に合わないのに。」言いなが
らノブ子の瞼を靴裏でツンツンと小突く。痛くは無い。
それどころか冷たいミュールの底が、熱を帯びた顔に心地いい。できれば小突くの
ではなく、当てたままにしてほしいと感じていた。
「エレナ様、有難うございます。」「フフフ、今日のお前は可愛いわよ。」エレナ
の機嫌が戻った様だ。ノブ子は安心した。
「ヒールを咥えてごらん。」唐突なエレナの言葉だった。
ミュールに口付けできる。お礼を言うべきか迷ったが、すぐに実行に移した。
ノブ子は口いっぱいに頬張ろうと、顔を斜めにして口を空けた。
「違うわよ。正面からやるのよ。おでこに靴底を当てる様にするのよ。」
エレナに言われた通り、靴底に顔を押し付ける様にし、おでこに靴底を当ててヒー
ルを咥えた。
「そのまま上にずらしてごらん。」次のエレナの命令だ。
ノブ子は上半身を伸び上がる様にして力を入れた。スルっとミュールが脱げ、美し
い足裏が現れた。
「これが脱がし方よ。一回で覚えるのよ。これからは何回もやらせる事なんだから
ね。さあ次は履かせてごらんなさいな。」
さっきとは逆の手順で試した。足裏から媚薬の匂いがする。足裏に顔を擦り付けた
いのを我慢し、何とか履かせる事ができた。
「初めてにしては上手よ。慣れるまでは足を組んであげるわ。昨日は解らないって
泣いてたわよね。コツはあたしの足の角度に
合わせる事よ。爪先を咥えたりしなきゃいけない場合もあるけど、ちゃんと研究な
さい。でも焦って傷でも付けたら許さないからね。」
「有難うございます。」頭を擦り付けた。エレナ様も満足してくれたのであろう
か、心地良い荷重が頭に加わる。軟らかい踏み付けだ。
ノブ子は嬉しかった。初めてエレナ様に褒めてもらえた。おまけにヒールとはい
え、靴裏に口付けを許されたのだ。
「そのままお聞きあそばせ。」踏み付けている足を下にして、エレナが足を組ん
だ。ヒールに力が加わり身分が自覚させられる。
「はい。」足下から聞こえるノブ子のくぐもった返事に、顔を緩めながらエレナが
話し始めた。
「バイト代とか条件だけど、やるからにはあたしのやり方できちんとやるけど、先
方のご両親はどんな条件提示しているのかしら。」
ノブ子は素直に話した。50万で全てを賄う事や両親が留守がちな事、浩介の性格や
家庭環境等を包み隠さず話した。
話の途中、エレナが足先でリズムをとったり、足を組み替えたりする度に、頭と顔
に激痛が走ったが、悟られまいとノブ子は我慢した。
「ふーん、大体解ったわ。それでお前、あたしを一体幾らで雇うつもりなの。」頭
の上の足はそのままである。
「雇うだなんて、そんな。」ノブ子は返答に窮した。
足がどけられたが、まだ顔を上げられずにいる。とその顔と床との隙間にエレナの
足が割り込んできた。
予想していなかった。わざとでは無いが唇に足指が触れた。それにエレナの足の匂
いも嗅げる。媚薬の匂いを嗅げた。
※元投稿はこちら >>