契約彼女6‐6
「あぅぅ~……」
翌日、友恵はベッドの上で悶絶していた。
腰が砕けたらしい。
その間抜けな声に思わず笑みが溢れてしまう。
「い、今……何時ですか?」
「ん? えーっと……」
灰皿に遣っていた視線を時計へ向ける。
「12時半くらい」
「え……ヤバっ」
と言いつつ、身を起こしては倒れ込む。
「バイトか?」
俺の質問に首を縦に振る友恵。
「しゃーねぇな」
煙草を灰皿に擦り付け、俺は身支度を始めた。
当初ホールスタッフとして雇われていた俺だ。
多少ブランクはあるものの、友恵の替わりくらいは務まるだろう。
9月を前にしているというのに、日の光は弱まる気配がない。
ムシムシした感じがなくなった分、その熱線は余計に鋭く感じた。
残暑の辛さを見に受けつつバイト先に到着し、昼間のバイトリーダーに友恵の代わりで来たことを告げると、
「あ、大丈夫大丈夫。今日暇だからなんとかなるって」
とかぬかして、俺を追い返しやがった。
店長に人件費を浮かすよう言われているらしい。
「俺、めちゃくちゃ暇じゃねーか」
一人呆然として煙草を吹かしていたが、折角外に出たので大学に行くことにした。
大学はバイト先から徒歩10分くらいのところにある。
取り敢えず学食で空腹を満たそうと思い、そこへ向かう。
今日の日替わりランチは何だろうかと考えていると、学食から見覚えのある奴らが出てくるのが見えた。
美佳を含む、1回生の後輩たちである。
「あ、おはようございますっ」
と言われる中で、美佳だけは続けて
「これから、よろしくお願いします」
と頭を下げた。
「え、何が?」
無論、意味がわからない。
「先輩、秋番組の班見てないんですか?」
あ、班発表今日だっけか。
全くもって忘れていた。
「あぁ。んじゃあ、ま、メシ食ったら見に行くか」
そうか、もうそんな時期なのか。
俺の思考は、日替わりランチから番組コンセプトの練り上げへと切り替わっていく。
メシを食って部室へ赴き、班発表の紙を確認してみると、確かに美佳と同じ班に組み込まれていた。
アナウンサーは美佳を含め二名。
ミキサーも二名。
ディレクター、俺一人。
ディレクターは三回生まで含めて五人しかいないから、平日五日間の班割りを考えたら妥当だろう。
というか、一人にならざるを得ない。
俺は美佳を除く班員にメールをし、打ち合わせの日時を取り決めた。
※元投稿はこちら >>