契約彼女6‐5
鎮まった性欲に替わり、理性がじわじわと広がっていく。
床に飛び散った快楽の証に顔を近づけていく友恵。
彼女の舌先が床に触れた時、俺はその行為を制止させるかのように友恵を抱き留めていた。
「ご主人様……?」
「……もういい」
友恵の体は未だに火照っていて、熱い。
「俺のために、そんなこと……」
彼女を抱き締める腕に力が入る。
そんな俺に、友恵は腕を回した。
「……違います」
俺との間に少し空間を作った友恵は、赤い顔で微笑んでいた。
「私がしたいんです。私のために……」
彼女はまた俺に密着すると、恥ずかしそうに続けた。
「一緒にアレを見たときから……ずっと、ずっと思ってました。私が……変なんです」
でも、と言って、彼女は更に俺を抱き締める。
「仁さんも同じなんですよね? 私が求めることは、仁さんも求めてるんですよね? ね?」
何処か責めを感じさせる彼女の問いかけ。
確か、友恵との関係が始まったときにも、俺は今と同じ様な気持ちになった気がする。
友恵は自分の言っていることに……自分のやっていることに、正当性を欲している。
裏を返せば、自信が持ちきれていない状態だということ。
何処かで不安を感じているということ……。
「……そうだよ」
そう呟いていた。
そう言ってあげないと、友恵は何を信じていいのかわからなくなってしまうのではないかと思って。
実際、友恵の言っていたことは正しい。
俺の求めた行為は友恵がしてくれる。
そしてそれは、彼女の願望でもあるというのなら、イエスと言う他に何がある?
何もないじゃないか。
何もないはずなのに……。
「……良かったです」
柔らかく微笑む彼女は、何の迷いもなく俺を見上げる。
そして甘えるように唇を重ねた。
ベッドに雪崩れ込み、互いの温もりを求め合う俺と友恵。
膨らんでいく欲望は悦楽へと昇華され、快感に収縮される。
何度も何度も友恵を貫き、突き上げた。
だが、俺の中に残った蟠りを打ち砕くことはできなかった。
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