契約彼女4‐7
部屋の中には食欲を誘う匂いが漂っていた。
「あ、お帰りですっ」
台所に立つ友恵は半身を翻し、ニコリと笑う。
「ただいま……」
胸が痛い。
「メールくれたら、帰ってくるのに合わせて作れたのにっ」
口を尖らせて見せる友恵だったが、声は弾んでいた。
「今日は、今日は……仁さんの好きな豚カツでーすっ!」
胸が痛い。
「あのさ」
想像以上に口が重い。
「はい?」
俺の声色に友恵のテンションが抑えられる。
「もし、もし俺が、友恵以外のコとヤったら……それは……浮気になるのかな……?」
「なりません」
即答で返す友恵。
まるで予期していたかのように。
「……そっか」
なんだ? この安堵は。
「だって、浮気も恋人がいないと出来ないことですよ?」
恋人がいないと出来ないコト……。
仮とは言え、友恵は恋人のポジションにいるはずだ。
じゃあどうして浮気は、浮気にならないんだろうか。
「でも、私が他の人とエッチしたら……それは、浮気かもしれません……」
「……は?」
俺が投げ掛けた疑問符は、油の跳ねる騒がしい音に掻き消された。
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