契約彼女4‐2
3泊4日の合宿は3日目に入り、それももう日付を跨ごうとしていた。
各班が制作した番組を聞き、爆笑したり、考えさせられたり、切なくなったり。
そして打ち上げが行われ、宴も酣(たけなわ)を迎えた。
そんな中、缶ビールを片手にひっそりとそこを出た。
夜空には星が瞬いている。
俺は煙草をくわえると、それに火を点けた。
友恵はどうしているだろう。
気を遣ってか、メールは一つも届かなかった。
そしてメールができる状態になった俺もまた、時刻を見てそれを送らない。
灰をポンッと落とし、缶ビールに口をつける。
「あの……先輩」
「へ?」
声のした方には美佳ちゃんが立っていた。
どこか追い詰められたような顔をしている。
「先輩は、彼女が浮気したら……どうしますか?」
都合がどうかも訊かずに、美佳ちゃんは質問を投げ掛けてきた。
「なに? 浮気されたの?」
力なく首を振る美佳ちゃん。
「遠距離って、寂しいですよね」
何処かで似たような台詞を聞いた気がする。
って言うか、あなたも遠距離だったんですか。
「先輩は、どうして2年も耐えれたんです?」
「……ま、座ったら?」
そろりと横に座り込む美佳ちゃんを尻目に、俺は煙草を吸い込み、長く息を吐いていた。
「信じてたから、かな」
俺が会いたいと思っているように、相手もきっとそう思ってくれている。
だから、お互いになんとか都合を合わせて会おうと努力する。
そういうものだと思う。
いや、思っていた。
「信じる、か……」
美佳ちゃんは左手の薬指にはめたシルバーリングを見て、溜め息をつく。
「でも、私が寂しいみたいに、相手も寂しいんですよね、きっと……」
「え? まさか、浮気してるの?」
俺の言葉には何も言わず、美佳ちゃんは膝を抱えた。
「もし心が揺れてるだけで浮気って言うんだったら……浮気してるかも」
何だか難しいことを言ってるみたいだが、要するに気になる奴がいるってことだよな。
「んで? 美佳ちゃんはどうしたいわけ?」
そこが一番肝心なところだろう。
別れたいのか、付き合っていたいのか、付き合ったまま他の男と遊ぶのか。
「相手に聞いてみます」
「……相手?」
相手って誰?
彼氏のことか?
浮気したい奴?
混乱している俺を他所に、美佳ちゃんは膝を抱え直し、暗い空を見上げていた。
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