●プロローグ
手首に微かな痛みを感じた。
さっきまで暴れていたせいに違いない。
漸く大人しくなった私を、目を細める一人の男が見下ろしていた。
「うっ……あぁぁ……」
全て出しきったのか、低く呻いたその男は、漸く私を貫いていた凶器を引き抜いた。
中で暴れていた精子が、出口を見つけて外へ流れ出ていくのを感じる……。
「なんだ、初めてなんだ」
薄ら笑いを浮かべる男に、私は唇を噛み締めることしかできなかった。
「よかったなぁ? 『まともな』初体験でさ。ほら、ダーリンって呼んでみな?」
「だっ、誰がっ!」
声を上げるとアソコがズキンっと痛む。
まるで火傷を負ったように。
「何勘違いしてんだ?」
冷たい笑い。
口角の一端を吊り上げるも、笑っていない眼光が私を不安にさせる。
「いっ、痛いっっ!」
叫ぶ私に構わずに、髪を引っ張って股間を頬にぐりぐりと押し付けてくる。
蒸せ返るようなカルキ臭と、それに混じる血の臭いが鼻をついた。
だけど、私の手は頭上で縛られ、ベッドに結びつけられている。
顔を背けたところで、それ上回る力が加えられた。
「これがお前を女にした、愛しのダーリンだよ」
「ぃゃっ……」
力が抜けていく。
取り消せない事実が、悪夢が、痛みを伴って蘇ってくる。
「ほら、言えよ。それとも、夕月(ゆづき)にやらせようか?」
「あ……あの子は関係ないでしょっ」
「ふ~ん……なんで自分がこんな目に遭うのか……自覚はあるようだな」
「………………」
何も言い返せなかった。
この男、従兄弟の理久(りく)がこんなことをする理由……。
私には心当たりがある。
「ほら言えよ、聖月(みづき)っ。『ダーリン』って甘えた声でさ」
頬に擦り付けられるオトコが、勝ち誇ったように跳ねている。
「だ……、ダー……リン」
その後暫く、嘲笑が耳に木霊していた。
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