●ダーリン2‐1
髪を滑った名残を探すように、私は頭に手を置いていた。
花は枯れるのに咲くと嘆くけど、根っこが残ってたら当たり前だと私は思う。
そう……いくら花を枯らしたくても、根底に生命力が宿る限りまた花は咲いてしまうんだ。
きっと……。
「何やってんの?」
「え?」
夕月の声に振り返ってから、自分の頭に手を置いたままなのを思い出した私。
「いや、あのっ……こ、この辺にツボがあるらしくてっ、はっははは……」
「ふ~ん……」
怪訝な眼差しを向けた夕月は、あまり深くは突っ込まずに冷蔵庫から市販のお茶を取り出す。
「どーでもいいけどさ、お風呂入ったら?」
「そ、そだねー。そうしようかな」
「理久に覗かれても知らないからね~」
からかうように吐き捨てて、夕月は階段を上っていった。
憎らしいほどのおっぱいをユサユサ揺らして。
ホント……理久が言ったように私のとはえらい違いだ。
っていうか、既に覗かれるとかの次元じゃないし……。
そう懸念している相手はまだ帰ってない。
新歓の連中にでも捕まってるのかな。
「………………はぁ」
自分でもよくわからない溜め息をついて、私はリビングを離れた。
最近髪が傷んでる気がする。
就活のために黒くした自分の髪を人差し指でクルクルやりながら、私はそんなことを思っていた。
もっと色んな事を考えなきゃいけないのに、目についたものがその思考を抑制させる。
階段を上る前に見た玄関には、理久の靴がまだなかった。
これは二次会パターンかな?
鍵は持ってるハズなので、戸締まりをしておこう。
しんっと静まり返った家の中に夜が溢れてる。
夕月は明日も学校があるので、私は静かに階段を上っていた。
丁度踊り場の辺りに差し掛かったとき、何か聞こえた。
「……っ、……」
なに?
「…………ぁ……っ」
夕月?
「ぅ……っっ……んん……」
それは夕月の部屋ではなく、理久の部屋から洩れていた。
私は一瞬訳がわからなくなって、血の気の引く思いだった。
理久に裏切られたという想いが胸を掠める。
でも、ふっと我に返った私は、まだ理久が帰っていないことを思い出させた。
……ということは、どういうこと?
いつの間にか、私は聞き耳を立てていた。
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