契約彼女1‐7
少し歩み寄ってきた彼女は、突然俺の手をとった。
「私、カレにしたいことが沢山ありました」
そりゃそうだろう。
「仁さんも、カノジョさんにしてあげたいことがありましたよね?」
まぁ、なかったわけではないけども……
「もちろん、して欲しいことも……」
「……で?」
ハッキリ言って何が言いたいのかわからない。
「私が、してあげます」
……は?
「互いにやり残したことをすれば、前に進めると思うんです。」
よくわからない理屈だ。
「でも、それには相手が必要なんです」
まぁ、そりゃそうだろうな。
「私、変なこだわりのせいで結局カレに捧げられませんでした」
ヴァージンのことか。
だから、ない方がいいって言ってたんだな。
「で、仁さんがロストヴァージンをくれました」
いや、だからその表現はなんか違う気が……。
「なので、前進のお手伝い……してくれますよね? ね?」
もしかして……脅されてる?
「つまり、やり残したことをやる相手になれってこと?」
「はいっ!」
トモは満面の笑みで頷いた。
「あ、もちろん私も仁さんの相手になりますから」
なんじゃこりゃ。
よくわからない関係……恋人と呼ぶには不可解で、友達と言うにはもっと深い間柄。
失恋から立ち直ることを目的とした契約上の恋人……か?
ただ、トモの初めてを奪ったのは事実であって、俺が選択できるのは
「……頑張らせていただきます」
という返答しかなかったのだった。
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