契約彼女2‐2
変な悪寒を感じながら俺は自宅へ戻った。
日は傾き始めたばかりで、夕刻だというのに空は青々と澄みきっていた。
「お疲れさまですっ!」
明るく迎えてくれたのは友恵だ。
彼女には合鍵を渡している。
それが友恵の希望だったから。
台所に立つ彼女はエプロンをかけ、夕食を作っていた。
時間のあるときに料理の特訓をしていたらしく、覚えたレシピの数はとっくに俺を抜いている。
ただ、食べさせる相手がいない今、それを美味しくいただくのは俺の役割になっていた。
料理を作ってあげるのは、友恵がやり残したことの一つなのだ。
腕を振るう彼女の心境を窺い知ることは、俺にはとても憚られた。
美味しくいただいて、美味しいよって言ってあげるのが、俺にできる精一杯のことだ。
「そう言えば……」
何かを思い出したように一瞬動きを止め、クルッと踵を返して此方に向き直る友恵。
「なに? どうした?」
「掃除したときに発見したんですけど……」
そ、掃除?!
「押し入れにあったアレ、何ですか?」
あ、アレ……?
「アレって、何?」
もしかして……
「でぃー・ぶい・ディー」
笑顔なのが逆に怖い。
って言うか、男なんだしAVくらい見るって!
こういう場合、どう言い訳したらいいんだろうか。
言葉が出そうで出ない、喉がつっかえたような状態だ。
「仁さん……彼女さんああいうこと、して欲しかったんですか?」
「え?」
友恵は少し顔を赤くして尋ねてくる。
その質問の意図が俺にはよくわからない。
だがしかし、イエスという答えであるのは確かだった。
「まぁ、そうだけど……」
と言ってしまっている俺。
それを聞いた友恵は更に顔を赤くして、
「じゃあ……頑張ります」
と呟いた。
「……は?」
頭が混乱してきた。
「……したかったこと、して欲しかったことは……私が……替わりに…………」
恥ずかしさからか、顔を俯けてもじもじとしている友恵。
その仕草がとても可愛らしく、知らないうちに胸が高鳴っていた。
だが、その脈動と呼応するように、どこかに潜んでいた欲望も大きくなっていった。
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