一哉は、汚された餌を勢いよく食べ終えた。
恵美は、一哉が食べ終えるのを確認すると立ち上がった。
「バカ犬…皿をくわえなさい…行くわよ…」
「はい!」
一哉は、皿をくわえる。
恵美は、鎖を引っ張り家に向かう。
恵美は、玄関や庭に行くときに使ったドアではなく、家の裏手に回る。
ひっそりと暗いドアの前に立つと、恵美は、ドアノブを回して中に入る。一哉は
〔何処に行くんだろう…〕
恐る恐る付いていく。中に入ると、直ぐに下に降りる階段になっていた。
二人…一人と一頭は、暗い階段を一段一段ゆっくりと降りていく。
階段を降りきると恵美は、壁のスイッチをいれる。
パッ!
蛍光灯が点いて部屋が明るくなる。
一哉は、眩しさに一瞬目を閉じるが、直ぐに目を開けて部屋を見回す。
そこは、打ちっぱなしのコンクリートに囲まれた部屋だった。ニ十畳程の広さがある。天井から何本も吊革が垂れ下がり、むき出しの便器が置いてある。壁には赤い張り付け台が備え付けられて、奥には牢屋があり、鉄格子が冷たく光っている。牢屋の中にはシングルベットとおまるが置いてある。
一哉が不思議そうに部屋を眺めていると
恵美は、
「お前の部屋は…此処よ…さぁ…牢屋に入りなさい」
グイと鎖を引っ張る。
「はい。」
一哉は、ドキドキしながら四つん這いのまま、牢屋の中に入る。
ガチャ。
恵美は、鉄格子を閉じて鍵をかける。
「あっ…恵美様!」
恐怖と不安が入り交じった表情で振り替える。
恵美は、鉄格子越しに冷たい眼を一哉に向ける。
「しばらく此処にいなさい…後で迎えにくるわ…」
そう言い終わると恵美は、踵を返して部屋を出ていく。
一哉は、不安に駆られながら牢屋に佇む。
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