後輩は性奴隷……9‐3
次の日。
先週だったはずの大型連休も、既に遠い昔のように思えてくる。
「今日結衣ちゃん見た?」
右隣から部活仲間が身を乗り出してくる。
「見た見たっ」
と食い付いた別の友人が、だるそうな頭を持ち上げた。
「いんや?」
間に挟まれた俺は、むさ苦しさに顔をしかめて答える。
「めっちゃ雰囲気変わっててんけど」
「へぇ~」
どうでもいいが、お前らノートとる気ねーだろ。
「そうそう。何か妙に大人びてたなぁ」
「イメチェンしたんやろ?」
そう言いながら、板書をカリカリと書いていく。
この教授はやたらと書くスピードが速い。
「あぁイメチェンな。恋でもしたんちゃうか?」
「なんで?」
「言うやんけ。恋をしたら綺麗になるって」
俺を挟んで会話するなって。
「可愛いよなぁ、結衣ちゃん」
って言うか、何でお前はそんなに馴れ馴れしく名前を呼ぶんだ?
「いや、俺的には・・・」
挙げ句の果てには、タイプがあぁだこうだと言い合う始末。
頼むからノートをとる邪魔をしないでくれ。
しかし恋をしたのなら、宣戦布告の件は納得がいく。
結衣が恋か……相手は誰だろう。
一度は見ておきたい。
俺くらいの変態じゃないと、結衣の性欲を満たせないだろうしな。
こりゃ、早く関係を清算してやらないといけない。
相変わらず教授の書くスピードは速い。
それを書き写しながら、俺はそんなことを考えていた。
「はぁ~……」
授業が終わり、喫煙場所で一服する。
右手が腱鞘炎(けんしょうえん)になりそうだ。
「あ、先輩発見っ」
缶コーヒーのプルタブを起こしたとき、俺は結衣に発見された。
彼女の髪はいつになくストレートで、黒い髪の毛先が少し覗いた鎖骨にかかっている。
服は白いロングスカートのワンピースで、薄ピンクの半袖シャツを羽織るように着ていた。
でも顔はやっぱり童顔で、年齢相応のファッションも少し背伸びしている印象を受ける。
結衣は俺の隣に座ると、
「何飲んでるんですか?」
と訊いてきた。
「コーヒーやけど?」
「え、コーヒーって苦くないですか?」
「ブラックも飲むけど、これは甘いやつ」
ボスのカフェオレの缶をマジマジと見つめる結衣。
「一口ください」
「あぁ、別にいいけど……」
差し出された缶コーヒーを、彼女は両手で受け取った。
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