後輩は性奴隷……9‐2
「で、どうなんですか?」
蒸せ返るような熱気が冷めた頃、真里が甘えたような声で訊いてくる。
「……え、何が?」
ベランダの外で煙草を吸っている俺は、清々しいほど真っ黒の夜空から視線を彼女に移す。
「あの子と、私……」
「あぁ、それね」
そう言いながらまた夜空を見上げ、煙草を口に運ぶ。
別に軽く考えているわけではない。
彼女の場合、もう答えは出ている。
「俺のこと、好き?」
「え?」
面食らった真里だったが、直ぐに微笑を浮かべた。
「当たり前ですよ」
「違うな」
断言した。
「お前は気付いとらん。心が泣いてることに」
「……心が?」
「その『好き』というのは、言わば防衛本能。好きな相手やから体を重ねたと思わせてる。ちゃうかな?」
つまり、気持ちよりも先に体の関係を持ったことで、それに理由を求めているということ。
結衣とは違って、主従関係というものがどういうものかを知らなかった真里は、その理由を強く求めているはずだ。
そして「好き」という感情で誤魔化すことで、その理由とすり替えている。
「そう、かも……知れません」
意外と素直に呑み込んだ彼女だったが、やはり全てを理解は出来ていないように困惑していた。
「……でも」
と言葉を続ける彼女は、まるで別れを拒むような切ない眼差しで、網戸越しに俺を見遣る。
「でも、きっかけなんてどうでもイイじゃないですか。たまたまエッチが始まりだったってだけで……」
「なぁ」
「はい?」
「恋って何?」
ずっと忘れているその気持ち。
俺には思い出すことができない。
でも、体を重ねる幸福感だけがそれではないはずだ。
「恋は……何て言うか、その人の事で頭が一杯で、ん~……その人の言動で嬉しくなったり、悲しくなったり、嫉妬したり、ドキドキしたりキュンキュンしたり……」
月並みの表現だな。
でも、やっぱり高2の夏に置いてきた感覚で、今の俺には持ち合わせていないものだ。
再会できた朱音にさえも……。
「そういうの、なる?」
「そりゃあしますよ。あの子と会った時にはすっごく嫉妬しました」
「普段はどうなん?」
「え?」
「普段は、俺のこと気になるの?接客中も?清瀬さんと話すときも?真里が誰かと遊んでる時も?」
「ぁ……それは……」
思案するように視線を這わせるものの、真里がその問いに答えることはなかった。
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