後輩は性奴隷……5‐2
春の夜風は生温く、気持ちがいい。
ベランダに出て煙草をふかしていた俺は、
「そんな人いるんですか~?」
と問うたむっちゃんの方へ首を捻った。
「いるわ」
「でもぉ、まるで奴隷みたいじゃないですかぁ?」
「そういう扱いをされて感じる人もいるし、寧ろ気付いてない人もいるかもしれん」
「気付いてない?」
「そう。たむっちゃんみたいに、自分の性癖に気付かず、ただ漠然とした物足りなさを感じてるかもしれん」
ふぅと吐いた煙が風に乗って散々になる。
「それってぇ、私は実は『変態』かも知れないってことですかぁ」
「そういうわけじゃ……」
「私ぃ、襲われる感じがドキドキするんですよ~」
ベランダの床で煙草をもみ消し、携帯灰皿に吸い殻を入れた。
「んで?」
と言いつつ、室内に戻る。
「でも、なぁーんか違うんですよねぇ」
と言われましても。
「悠さんは実際にそんなことをしたことあるんですかぁ?」
「そんなこと?」
「命令したりとか、恥ずかしいことさせたりとか……」
少し身を起こし、目をパチパチさせるたむっちゃん。
「あるよ?」
と言った瞬間に、彼女は改まったように座り直した。
「じゃあ、何か命令してみてください」
「え?なんで?」
「だって、実はそーゆーのが好きかもしれません、私」
真顔で言われても全く雰囲気が出ないんだが。
っていうか、酔った勢いってやつですよね?
「彼女いるんですかぁ?」
「…………いや?」
一瞬躊躇いを覚える。
俺は嘘は言ってない。
言ってないはずなのに、後ろめたさを感じるのは何故だ?
「じゃあ、いいじゃないですか。お互いフリーですし」
軽いな、たむっちゃん。
お酒も手伝ってるんだろうが、もっと真剣に物事を考えた方がいい。
「脱げ」
「……え?」
「脱げ」
俺は立ち上がり、たむっちゃんを……いや、真里を見下ろした。
真里は固まったまま俺を見上げ、やはり目をパチパチさせていた。
「聞こえなかったか?」
「あ……あの……」
視線を落とした真里は、上着を脱ぎ、シャツの裾を掴む。
それを俺は制した。
「ま、こんな感じ」
と苦笑する。
彼女の顔は酒にやられ、紅く火照っていた。
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