後輩は性奴隷……5‐9
「すごく、その……よかったです」
互いに身なりを整え終えた頃、躊躇いがちに真里が言った。
「んなら、真里はそういう性癖なんかもな」
「ぁ……」
視線を落とした彼女。
その意味は俺にはわからなかったが、直ぐに理解した。
「今、真里って……」
「あぁ、すまん。まだスイッチが入ってんのかな?」
わざとらしく自分の頭を小突いてみせる。
「いい……です。その、名前でも……私、あまり呼び捨てにされたことないから新鮮で……」
そんなものなのだろうか……。
そう思いながらジャケットを羽織る。
しかし、この先彼女とどう接していけばいいのだろうか。
理性の崩壊は、あまりいい展望を望めない。
朱音との過去がそれを物語っていて、俺はよくわかっていたハズなのに……。
そもそも、結衣のこともうやむやなままだ。
朱音に気持ちを伝えるには、全てにケリをつけなければいけない。
それがケジメってやつなんじゃ……
「……──、あのっ」
「はいっ?!」
何度目かの真里の呼び掛けに、ふっと意識が返ってきた。
どうやら一人呆然としていたらしい。
「『お前も』って……言いましたよね?さっき」
「……ん?」
「だから、お前“も”って……」
(やべっ!全く気にしてなかった)
「あれ、他に“も”いるってこと……ですよね?」
語尾が強気なのは気のせいだろうか……。
「あ、それは……やな……」
言いかけて、俺の頭は、例えるなら逆回転を始めた。
取り繕うとしていた思考が、素直に話せば良いという方向へと転換していく。
いずれ、話さなければならないかもしれないし、俺に興味をなくすイイきっかけかもしれない。
「それはやな、つまり、真里以外にもそういう関係の人がいるってことや」
真里の顔が強張っている。
それは当然のことだ。
俺は彼女に「気になる人はいる」とは伝えてはいるが、その人の他に体を重ねるだけの人物が存在するなど、普通の思考では思い浮かばない。
「っ……」
彼女は息を呑み、目線を泳がせる。
真里。
俺なんかよりも、もっと君を大切にしてくれる人がいるは……
「でも、付き合ってないんですよね……?」
「……え?」
付き合うもなにも、結衣はそーゆー対象では
「私にもチャンスをくださいっ」
いや、だから……
真里の真っ直ぐな目線が突き刺さる。
このとき俺は、彼女の性格を真に理解できた気がした。
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