後輩は性奴隷……8‐5
「先輩は、ペットに首輪はつけないんですか?」
中をキョロキョロしながら、不意に結衣が尋ねてきた。
「さぁ……飼ったことないしなぁ。あ、ハムスター飼ってたけど、普通ハムスターには……あれ?」
彼女が立ち止まったので、話を区切り、振り返る。
「……結衣?」
「飼ってますよね、ペット」
普通の会話をしていたはずなのに、その言葉が内容の方向性を変えさせた。
彼女の瞳が何かを訴えている。
「私には要らないんですね」
小さな声だが、辛うじて拾うことができた。
視線が降りていくその仕草が、悲しみや諦めを汲み取らせる。
そこから、彼女はそれを必要としていることが読み取れた。
しかし俺には必要ない。
所有物として置いておきたいのは、結衣じゃないから。
「あ……のな、結衣」
二人を取り巻く空気が、俺の気持ちを伝えさせる方へ流れ始めている。
「実は……」
上手く言葉が出てこない。
気持ちを伝えることを、何かが躊躇わせている。
小さく燻っていたはずの混沌とした部分が、急速に胸を覆っていく。
「その……」
でも、いずれは言わなければならない本心。
結衣には必要ない理由。
結衣には……
(…………私「には」?)
結衣はどうしてそう言ったんだ?
どうして……。
「じょ、冗談ですよっ」
暗い雰囲気を察したのか、慌てて取り繕う結衣。
「お前、何を知ってる?」
「え?何がですか?」
本当に何のことかわかっていない結衣だったが、
「言うたやんな?『私には』って」
と言うと、忽ち表情が変わる。
「この前もそうや。『前の人』って誰や?」
明らかに動揺している結衣は、首筋にあてた左手を忙しなく滑らせている。
結衣……お前は俺の何を知ってるんだ?
「その……ごめんなさい!」
「え?」
「急用を思い出しました!」
踵を返した彼女は、弾かれたように駆け出した。
「ちょ、おい!」
あからさまにバレバレの嘘を吐く様子から、俺には言えないことのようだ。
しかしそれは、何か知っているということを肯定することにも繋がる。
結衣、一体何を知ってるんだ。小さくなっていく彼女背中に、内心で何度も問い掛けていた。
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