後輩は性奴隷……11‐9
しかし、それでも合点がいかない。
確かに鞄の中のものは朱音に使用したものだが、それは見てだけではわからないだろう。
それで結衣が、現状で満足してるかと訊いてきたのも納得がいく。
でも、いくら行為を覗き見ていたと言っても、世の中にごまんとある代物だ。
……そうか。
卒業アルバムをあの辺りに仕舞っていたはずだ。
結衣はそれを見て、確信を得たのかもしれない。
「……悔しかったんです」
「なにが?」
結衣の隣に歩み寄って、高い空を見上げる。
「お姉ちゃんはもういないのに、先輩の中にはまだいたことが……」
あの宣戦布告は、俺の中の朱音に対するものだったのか。
いや、もしかしたら、「朱音にこだわり続けている俺」に向けられていたのかもしれないな。
「でも、ずっと先輩の中の存在だったお姉ちゃんが、昨日突然現れたんです」
もうダメなんです、と言う声は、今にも泣き出しそうなくらいに震えていた。
「お前はもう、俺の中で随分と大きな存在になってる」
この川原で胸を締め付けられたあの日から、性奴隷以上の存在に。
「……気休めですか?」
「ちゃう。真里が教えてくれたんや」
彼女が俺に、恋をする痛みや辛さを思い出させてくれたんだ。
「ずっと結衣のことが気になってた」
宣戦布告を受ける、もっと前から。
「でも今は、元カノの妹として気にかけてますよね?」
「……なんで?」
「なんでって……知られてしまったから。私はもう、その枠組みからでることはありません」
「……もう、俺の中に朱音はいないのに?」
「え?」
そよ風がサラサラと流れ、俺の顔を見た結衣の髪を靡かせる。
艶やかで、綺麗な黒髪を。
「昨日朱音と話して気付かれた。俺の中にいたのは朱音じゃなくて、朱音に置き換えていた『責任』やったことに……」
髪を耳に掛ける結衣からは、話の続きを待っているかような期待が少しだけ窺えた。
「でも……知ってるやろ?俺が犯した罪のこと。それを背負ったまま誰かと一緒になっても、相手はきっと幸せにはできな「私もっ……」
俺が言い切るのを待たずに、結衣は口を開いた。
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