後輩は性奴隷……11‐7
明日に輝くと書いてアキラ。
それが、性別も知ることなくこの世を去った、俺と朱音の子供の名前だ。
明輝は俺を許してくれるだろうか。
ここ何日かは本当に大変だったけど、そのおかげで俺は沢山のことを学んだ気がする。
気付いたことも、間違っていたことも、自分のことも……。
明輝。
朱音の言葉を信じて、俺なりに罪を償っていくよ。
だから、しっかり見ててくれ。
そんな願いを、澄み渡る青空の向こうに込めていた。
残すところはあと一つ。
結衣の事だけだ。
今ならきっと、素直に向き合える気がする。
……いや、俺は結衣と、しっかり向かい合いたいんだ。
「っ……こ、講義……でないんですか……?」
俺の足音に振り返った女の子は、直ぐに顔を背けて膝を抱え直した。
「俺、方向音痴らしくてな。気付いたらここに着いとったんや」
低い堤防の道路沿いに並ぶ、すっかり葉っぱだけの桜の木々。
絶え間なく、穏やかにせせらぐ川の流れ。
花見のシーズンが終わったこの川原に人の姿はなく、そこにあったシルエットが結衣だと直ぐにわかった。
「……嘘って、わかってたんですね」
「わかったのはもっと後やけどな」
膝を抱える腕にぎゅっと力を入れる結衣。
「そうやって……期待させたんですよね」
「結衣……?」
「……っ。ごめんなさいっ。私、こんなこと言うつもりじゃっ……」
ハッとした様子で此方を向いた結衣だったが、直ぐに視線をふるふると泳がせて顔を背ける。
「私……帰ります」
「待てよっ」
立ち上がった結衣の手首を、俺は咄嗟に掴んでいた。
「放して!」
「放さへん!」
少し抵抗されたものの、徐々に腕の力が抜かれていく。
「先輩には……先輩にだけは、知られたくなかったのにっ!」
安心しきっていたのか、掴んでいた手首がスルリと逃げていく。
しかしそれは、結衣が此方に向いた反動のためであった。
ようやく彼女を前から見ることが出来たものの、涙の滲んだその顔に、俺は何もできなかった。
「知ってますか?!私がずっと、ずーっと前から、先輩に触れたかったことっ」
……知らない。
知ってるわけがない。
「知りませんよね?私も知りませんでしたから。でも……気付いてたのに、知らないフリをしてたってわかったんです」
彼女の気持ちが、堰を切ったように口から言葉っとなって溢れて来る。
結衣。
俺にお前の全てを教えてくれ。
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