後輩は性奴隷……11‐6
そうか。
俺は泣いているのか。
それで、朱音の顔が霞んでいくんだな。
でも、泣いてても何も始まらない。
……始まらない?
始める価値もない俺が、何を始めるんだ?
「ねぇ……悠?」
スンっと鼻を啜り、朱音は頑張って語りかけてくる。
「……ん?」
「人って、どうして生まれてくるのかな?」
「さぁ?……何でなんやろうな?」
こうやって罪を重ねていく人間まで、どうして……。
「……幸せになるためなんじゃないかな」
「幸せ?」
バカな。
この俺に、そんな権利が有るわけがない。
「私、思うの。
私達はきっと、あのこの分まで幸せにならなきゃいけないって……。
こうやって悲しみ合っててもダメなんだよ。
過去を大事にして、未来のために、今日一日を精一杯努力して、楽しんで、学んでいかないといけないんじゃないかな」
「じゃあ……じゃあ俺が、お前を幸せにする」
俺にはその責任がある。
「……ううん」
優しい声色で、でも、はっきりと朱音は首を横に振った。
「悠、あなた気付いてない。私を『責任の塊』としか見ていないことに……」
その言葉を聞いた時、頭を殴られたような衝撃に襲われていた。
「悠に抱かれたとき、よくわかった。悠が私に応えようしてくれてたことが……。でもそれは、それはね?」
朱音は一度区切り、溢れる涙を手で拭う。
「それは、使命感だったと思うの。もちろん、気持ちは良かった。実際、私の体が求めて抱いてもらったようなものだし。でも……でもね?心は辛かったんだ」
抱かれて初めてよくわかった、と彼女は呟く。
あの日、何も聞かないでと前置きをした彼女の本意。
それは、朱音自身も知らなかったということか。
それを知るために、朱音はあの夜……。
「……じゃあ俺はどうしたらええねん?!幸せになったらええっていうんか?!」
「そうだよ」
声を荒げる俺を、まるで母親のように抱き締める朱音。
「それでいいんだよ、悠。私は昔のことよりも、罪に苛まれてるあなたを見ている方が辛い」
俺は……幸せになっていいのか?
「ただ、あの子のことを忘れないであげて……」
忘れるもんか。
そんなこと、あるわけがない。
「最後のお願い、聞いてくれる?」
そう言って、朱音は少し距離を取る。
「一緒にあの子の名前を考えて欲しいの」
もちろん俺は、その申し出を快諾した。
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