後輩は性奴隷……11‐5
バイト先から出ると、俺を発見した朱音が歩み寄ってくる。
「誰ですか?」
「例の……」
それで察したのか、真里は要領を得たように何度か頷いていた。
「じゃあ……お疲れ様です」
「お疲れ~」
ありがとう、真里。
お前のお陰で、朱音と話せる余裕が少しはできたよ。
「……どうする?」
ただのバイト仲間と思ったのか、朱音は真里のことは何も訊かずにそう尋ねてきた。
実際今は、ただの可愛い後輩でいい……と思う。
いや、俺がハッキリそう言い切らないと、真の意味でそうはならないだろう。
気を付けなければ。
「何処でも?」
「出来れば、誰もいない所がいいんだけど……」
俺の家しかないような口振りだ。
「んじゃあ、俺んちでいい?」
朱音が頷いたのを確認し、俺は自宅へ招くことに決めた。
暗い夜空は皮肉な程に澄み渡っていて、丸い月から銀色の光が降り注いでいる。
この時期のこんな晴れた夜は、大概冷えるものだ。
「電気、消しててもええかな?」
朱音の顔を直視すると、自分が押し潰されてしまう気がする。
「いいよ……ちゃんと話を聞いてくれるなら」
俺がよからぬことを考えていると思ったのか、彼女はそのように念を押す。
さすがにさっきの台詞からは、俺の内心を悟ってはもらえなかったようだ。
明かりを消すと、カーテンを閉め忘れた窓から月の光が射し込んだ。
その淡い光が、朱音の表情を鮮明に照らし出し出す。
「何から話そっかな」
朱音は緊張を解すように少し伸び上がった。
「いつ離婚しはったんや?」
「え?」
どうして、といった表情を浮かべる朱音。
「やっぱり、俺のせいなんか……?」
「違うよっ。私のせい……かな」
同じことじゃないか。
ずしりと重いものがのし掛かってくる。
一体俺は、どれだけの人の人生に影響を与えたら気が済むんだ?
自分でもよくわからない。
わかるはずもない。
「違うってば。悠が悪いんじゃないんだよ?」
朱音はあの時言った。
話すまであまり考えるなと。
それは、彼女曰く「責任感が強い俺」への配慮だったのだろう。
生憎それに従わなかった俺は、姉妹で苗字が違う理由に気付いた時、もぬけの殻になってしまったわけだ。
「大丈夫やて。今更罪を増やし「嘘っ」
きっぱりと言いきる朱音。
「じゃあ、どうして泣いてるの?」
そう言う朱音もまた、頬に一筋の軌跡を描いていた。
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